第58回日本プロゴルフシニア選手権大会 住友商事・サミットカップ

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第58回日本プロゴルフシニア選手権大会 住友商事・サミットカップ

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第52回(2013年)

プレーオフを制した渡辺司がシニア4勝目

渡辺は2008年以来2度目の大会制覇

渡辺は2008年以来2度目の大会制覇

 

国内シニアメジャー「日本プロゴルフシニア選手権大会 住友商事・サミットカップ」は、サミットゴルフクラブで行われ、最終日、2位に5打差をつけてスタートした渡辺司(56)は、7アンダーと猛追する室田淳(58)に並ばれてプレーオフへ。1ホール目で7メートルのバーディパットを先に沈めた渡辺が激戦を制し、5年ぶり2度目となる日本プロシニアチャンピオンの座についた。

 

2013年の大会成績はコチラ>>

第1ラウンド

世界のアオキは、魅せるゴルフで期待に応えてくれる

世界のアオキは、魅せるゴルフで期待に応えてくれる

 

 青木功(71)が、エージシュートを達成した。腰痛を抱えてのゴルフだったが、3バーディー2ボギーの1アンダー71をマークし、14位発進。ツアーでは2011年コマツオープン以来4回目、公式戦では2007年日本シニアオープン以来の快挙を達成した。予選会ランキングから参加した南條勝美(62)が7バーディー、1ボギーの6アンダー66で首位に立った。大会連覇を狙う室田淳(58)は3アンダー69で3打差8位の好スタートを切った。

◇   ◇   ◇

 「たまたま、71歳でゴルフが出来ていることがうれしいんだよ。エージシュートのエの字も言ってないよ」。

 青木はエージシュート達成の気持ちを聞かれて、こう表現した。少し照れがあったのだろう。60台での達成が、本人にとっては「エージシュート」なのだという。それでも、終盤のゴルフは執念ともいえる粘りだった。1アンダーで迎えた17番では、第2打がグリーンに少し届かず、バンカーの土手を転がって途中で止まった。極端な左足上がりのライで、寄せも5メートル。快挙見たさのギャラリーもため息。これをしぶとく決める。最終18番パー5では「クラブハウスで風が止まったのかな。あんなに飛ぶとは思わなかった」と、風の計算を間違えて、乗ったもののピンを15メートル以上オーバー。上って下るラインを打ち切れず、1.5メートルのパーパットが残った。これを真ん中から決めて、ホッとしたような笑みを浮かべた。「危なかったなあ」と振り返ったのも、エージシュートのチャンスを逃したくなかった気持ちがこもっていた。公式戦では2007年日本シニアオープン最終日に65歳で65を出して大逆転優勝を飾って以来のエージシュート。シニア公式戦2大会での達成はもちろん史上初の快挙だ。ツアー以外では今年2回達成しているが、距離やコースセッティングから言えば、今回のエージシュートは価値がある。

 実は腰痛が悪化していた。ツアー競技ではないが、先週の「日本グランドシニアオープン ユニデンクラシック」最終日に67のエージシュートを達成。この大会で腰をひねり、針やマッサージで回復に努めたが、痛みは取れていない。毎ショット、前かがみに腰を伸ばしたり、後ろに体をそらせて、ストレッチしながらのラウンド。8番で10ヤードのチップインを決めた際には、腰を押さえしばらく動けなかった。シーンとするギャラリーに明るい声で「お騒がせしました。ありがとうね」と応え、安心させた。ここ2年、この大会では予選落ちしている。「何とか1日もったよ」と笑わせ「あの2人(同伴の高橋勝成、真板潔)に連れて行ってもらった感じだ。感謝だよ。あと3日間、どうやってできるか。攻めてみたいとも思うが、攻めてもいい結果が出ない気もする。カリカリせずにやろう」と、締めくくった。

 刺激を受けたのか、青木ファミリーの面々が上位につけた。青木より先にホールアウトした白石達哉は、18歳で青木門下に入って「33年になるんです」という。シニア入りした昨年、富士フイルムシニア選手権で2時間に渡って指導を受けた。「九州でやっている1日大会のミニツアーでは勝っていたんですが、ドライバーのラインの出し方ができていなかった。教えてもらって安定してきた」という。ツアーでの優勝こそないが、レギュラー時代は飛ばし屋で鳴らし、いまも280ヤードは出る。シニアの中でアドバンテージを生かしたい。「今年はこれが最後の試合。考えてもしょうがない。やることやって、結果が出れば」と意欲を見せた。

 青木ファミリーの「番頭」と呼ばれた64歳の海老原清治は、青木のエージシュート達成を聞いてからスタートした。「腰が痛いっていうのに、こういうところ(公式戦)で71を出しちゃう。これはすばらしい目標だよね」。8バーディーを奪った。「ボギー(4つ)がなきゃ、おれもエージシュートだった」と、68のラウンドを振り返った。今年はシード権を失って4月の予選会(沖縄)で出場資格を獲得した。「練習ラウンドにいったら、たまたま青木さんも沖縄にいて『よし、一緒に回ってやる』って。何とか、報いていきたいんだよね」。自身の目標の64歳でのシード権復活が、青木に報いることにもなる。

 9位につけた弟子の渡辺司。「困った人だ。公式戦で出しちゃうんだから。青木さんが1アンダーで上がってたんで、こっちがビクビクしながらやったもん」と笑った。「こうなったら、青木さんより先にゴルフをやめたくないね。15歳もハンディもらってんだから」と、祝福の言葉に代えた。

 首位に立ったのは、予選会から這い上がってきた南條だった。「何がなんだか分からないうちに終わってしまった」と、66のラウンドを振り返った。無理もない。本人いわく「おまけばっかりだった」という、ミラクルの連発だった。1アンダーで迎えた11番パー3で右の奥のラフに外した。ボギー覚悟のアプローチが「フェースにきれいに乗った」と、約10ヤードをチップイン。始まりだった。13番では20メートル近いパットに「どうやって寄せようかと思って打ったら」入ってしまった。15番ではこれも20メートルほどのパットを「3パットしないように」と打ったら入った。同伴競技者もあきれて「またやっちゃってるよ、って言われましたよ。自分でもやりすぎ。気持ちは良かった」という。

 ゴルフの名門、静岡・伊東商の出身だが「遊びでしかゴルフはしていなかった」という。東京・府中の東京現像所に就職。映画フィルムの最終チェックなどをする仕事をしていた。たまたま近くにあった練習場で天野勝プロと出会い、ゴルフが仕事になった。レギュラー、シニアともツアーは未勝利。「1日、1日クリアしていきたい。一所懸命すぎてもうまくいかないと思う。今日のような気持ちのいいゴルフをしたい」と、無欲を強調した。

第2ラウンド

青木は最後まであきらめない気持ちで、あと2日間挑む

青木は最後まであきらめない気持ちで、あと2日間挑む

 

 渡辺司(56)が、8アンダー64の快スコアをマークし、通算10アンダー134で首位に立った。2008年の覇者で、5年ぶりのプロ日本一に近づいた。2打差で南條勝美(62)が続き、3打差3位でブーンチュ・ルアンキット(57)、大井手哲(51)、4打差5位でシニアツアールーキーの中根初男(50)ら、ツアー未勝利組が上位に進出。大会連覇を狙う室田淳(58)は通算6アンダーで5位、初日エージシュートを達成した青木功(71)はイーブンパー72で惜しくも2日連続の快挙は逃したが、通算1アンダーの12位で予選を通過した。

◇   ◇   ◇

 青木は、100ヤードの第3打を入れにいった。最終9番パー5の第3打で、ピンの位置を念入りに確認。距離的にはアプローチウエッジだったが「手前の段で止まるかもしれない」と、1つ大きめのピッチングウエッジを持った。パンチショットで低く飛び出した球は、ピン左1メートルで止まった。距離はピッタリだった。あと1メートル右だったら…入っていれば2日連続のエージシュート…。ゴルフに「たられば」はないが、見ている者がそう思いたくなるチャレンジ。バーディーでフィニッシュした青木はさばさばしていた。「8番をパーで行って、昨日と同じように(エージシュート)とも思ったが、コースはそう簡単に許しちゃくれないよ。自分の感覚が出てきたのはよかった」。

 アクシデントは7番から8番に向かう坂道。インスタートでここまでイーブンパー。パーで乗り切れば、9番でチャンスになる。歩きながら、痛めている腰をひねり、悪化させてしまった。「歩き方一つで台無しにしちゃったな」と後で振り返ったが、なんとかティーショットは打ったものの、第2打ではテークバック中にスイングをやめ、腰を押さえた。その場でストレッチや股割りをして、腰のベルトを巻き直したが、やり直した第2打は手前にショート。アプローチも寄らず、痛恨のボギーにした。それでも、最後まであきらめない気持ちの強さが、最終ホールの第3打に凝縮された。「ゴルフはそんなに悪くない。かみ合えば、いいゴルフが出来ると自分でも期待できる」といったが「明日からどの程度できるか、腰の具合をみて(決勝ラウンドを)やるかやらないか決めたい。やるからには最後までやる。トップと9打差だろ。2日間じゃ難しいかもな」。あくまで優勝が頭にある。

 青木が目指す首位には、弟子の渡辺がいる。エージシュートの可能性もあって、午前中にホールアウトしていたが、青木の帰りをグリーンで出迎えた。この日、64をたたき出して首位に躍り出た。「最初にバーディーが3つ来たし、自分の思い通りの感覚でゴルフが出来た。こういうときに結果を出さないでいつ出すんだよって」。アイアンショットが好調。前半は1番2メートル、2番5メートル、3番は「OKだった」と3連発。6番1メートル、7番は20センチ、9番も1メートルと、ピンにどんどん絡む。6バーディーで一気に駆け上がった。後半も17番でバンカーに入れてボギーにしたものの、3つのバーディーで10アンダーに乗せた。「ボードに、しかも左の一番上に名前が乗っかるのは選手冥利」と笑顔を見せた。前の試合のコマツオープン最終日に1イーグル、7バーディーのコース新9アンダー63をマークしている。青木ファミリーの先輩、海老原清治に「司、お前、バーディーマシンになってきたなあ」とほめられた。

 「他のすごい選手に比べて、僕はそんなに(優勝の)機会がある方じゃない。機会が来たときにしがみついていかないとね。ワクワク、ドキドキしながらゴルフをしたい。最終日のバックナインまでが、試合の半分と思っている。そこでワクワクしながらゴルフが出来るように今は準備しているところだと思っている」と一気に話した。2008年にこの大会を制している。自分で言うほど優勝の機会に恵まれていない訳ではないが、気持ちを引き締める。

 ツアー優勝の経験がない無名の選手たちも上位に上がってきた。

 大井手は2日間、ボギーなしで3打差3位に上がってきた。この日は9番で2メートルを沈め、14番ではカラーから5メートル、15番で左手前5メートルの3バーディー。「8番のパーセーブが大きかった」と振り返る。グリーンをショートし、アプローチが7メートルもオーバーした。「完全にボギーを覚悟しました」というパットが入った。長男の大学1年生、快くん(18)がバッグを担ぐ。記者の質問にも、快くんに確認しながらの二人三脚。温厚な受け答えに終始する。「飛ばないんで、ここはフェアウエーが転がってくれるんで助かっているんです」と照れる。ドライバー飛距離は250ヤード。一番飛んだときは? 「レギュラーのときの平均267ヤード、でしょうか」とまた照れる。「北関東シニアオープンのときに、奥田(靖己)さんから『もっと振れ』って言われたので、素振りでも速く振る練習はしているんですが」。20歳からゴルフを始めた遅咲き。「このままいくとは思えない。今までの経験がないですから。きのう、きょうみたいにはやろうと思っていますけど」と、残り2日間を思い描いた。

 今年がシニアツアーデビューの中根は「いつもパターで失敗するんですが、この2日間、普通にいけているんです」という。イーブンパーの28位からスタート。インで3つ伸ばして折り返した1番パー5では、残り245ヤードを5番ウッドで左5メートルに2オンでイーグルをものにした。2番では6メートルのパーパットを残すピンチも乗り切った。6アンダーまでスコアを伸ばして5位に浮上した。こちらも優勝争いの経験は少ない。「実はレギュラーツアーに出られそうなころに、ショットイップスになってしまって」という。スイング練習器具で悪いスイングをしたときに鳴る音が耳についてしまい「いきなりテークバックが上がらなくなった。構えて10秒、20秒、動けなかったこともあります」と振り返る。40歳直前に一度直ったが、一番いい時期をイップスで逃した。シニアに向けて、さあという3年前。日本オープンの予選に出場した際に、また突然上がらなくなった。「今は、テークバックに入るときにフェースを浮かせて一度ボールの上を一度通り過ぎてから戻してテークバックを上げるようにしています。やっと振れるようになって、ゴルフが楽しいんです。明日からも楽しくやるだけです」。

 ワクワク、ドキドキを味わえる機会をつくれるか。

第3ラウンド

渡辺は頭と技術をフル回転させた日だった

渡辺は頭と技術をフル回転させた日だった

 

 渡辺司(56)が、通算12アンダー204で首位を守った。各選手が硬いグリーンに苦しむ中、3バーディー、1ボギーの2アンダー70に手堅くまとめ、2008年以来5年ぶりのシニアプロ日本一のタイトルに王手をかけた。この日69で回ったグレゴリー・マイヤー(52=米国)が5打差の2位に浮上した。さらに1打差でツアー未勝利の南條勝美(62)が続いている。大会連覇を狙う室田淳(58)は最終18番でパー5でバンカーでのトラブルに見舞われてトリプルボギーの8をたたき、通算4アンダーの6位。腰痛に苦しむ青木功(71)は通算7オーバーの51位に後退した。

◇   ◇   ◇

 会見の席に、渡辺はへたり込むように座った。「放心状態。見るべきものも、語るべきものも何一つありません…」。

 精神的な疲労度がぐっと増した1日になった。グリーンが予選ラウンド2日間に比べて、遠めに見ても乾いて硬くなっているのが分かる。各選手がグリーンで止める、ピンに絡めるのに苦労する。渡辺も例外ではなかった。「こんなコンクリートみたいに硬くなったグリーンじゃ、僕は無理。ピンが狙えない。公式戦だから、それでも持っている技術を駆使してやらないといけないんですけど」と表情も硬い。しかも、首位という立場でスタートしたこの日。グリーンを7回外した。ボギー1つにしのいだのは「アプローチが奇跡的に寄ったり、パーパットが入ってくれたり。奇跡的でした」と振り返った。「昨日の64より、きょうの70をほめてやりたい」。各ホール、各ショットで頭と技術をフル回転させた日を表現した。

 それでも、この厳しい条件が2位に5打差をつける要因にもなった。追いかける選手も、ピンを狙ってグリーンオーバーしたり、ギリギリを狙ってバンカーにつかまったり。バーディーも取るがボギーも出るという展開で、伸びてこなかった。「今日の条件なら、ベストスコアは67か68ぐらいじゃないですか?」と逆質問。68(3人)と聞いて「そうでしょうね。あすは、僕が1つでも落とさなければ、みんなは届かないと思う」と自信たっぷりに言った後「僕がズリズリベッタリになると思うんで」と笑った。2008年のこの大会覇者で、09年には日本シニアオープンも制し、シニア公式戦2冠を達成している。公式戦の勝ち方も知っているかわりに、怖さも知っている。「日本女子オープン最終日に5打差で出た(宮里)美香ちゃんがズルズルベッタリになったでしょう。重なるんですよねえ、そのシーンが。僕より技術も経験も努力も勝っている美香ちゃんでさえそうなんですから。最後にあんなスーパーパットを入れたのは神様が最後に美香ちゃんを選んだと思う」。では、最終日は自分を選んでもらえる? 「うーん、これまでの行いだけで見れば無理でしょうね。今晩、世界中の神様に祈ることにします」と笑わせた。

 スコアが離れているとはいえ、不気味な存在が2人、浮上してきた。昨年の日本シニアオープンで逆転優勝しているフランキー・ミノザが、最終18番パー5(507ヤード)で、アルバトロスを達成して、優勝争いの圏外から一気に通算5アンダーとした。「きょう一番のティーショットだった。残り187ヤードを6番アイアンで打った。グリーンに乗せればという気持ちだった。入ったところは見えなかったけど」と会心の1打を振り返った。「グリーンにボールマークがなかった」というように、手前のカラーに落ちて転がってカップイン。自身2度目だといい「よく覚えていないけど、2007年の中国での試合(欧州・アジアンツアー共催TCLクラシック)だったと思う」と話した。ミノザにとってはぜひほしい日本タイトル。「7打差は大きい。明日は坂道を登るように思い切っていく。かなり急な坂道になるけどね。でも失うものはないから」と、闘志を見せた。

 スーッという感じで浮上してきたのがマイヤーだ。出だしの4ホールで3つのバーディーを奪い、後半もその貯金をキープして69。2位に上がってきた。

 「グリーンを狙うショットが良かった。でもこのコースは怖いです」という。初日、2日目とボギー2つが先行する形で出て行き、後半にカムバックするという展開だったが、この日はスタートダッシュを守った形になった。日本でのツアー優勝はまだない。「優勝が僕の夢」という。しかも日本タイトル。「初日、2日目に渡辺さんと回った。ああいうゴルフをしたい」といい「バーディー、バーディーでスタートして、勢いをつけたい」と、最終日もスタートダッシュをもくろむ。

 大会2連覇を目指して、一時は通算9アンダーまで伸ばした室田は、最終18番で悪夢を見た。その時点では通算7アンダー。第1打は左ラフに入ったが、2オンを狙った。手前のバンカーにつかまったが、位置が不運だった。バンカーの壁から約20センチほどのところにボールが止まった。3打目は前に出そうとしたが、壁に当たって真下へ。さらにボールが壁に近づいたため、前には打てず、思案の末左後方に打ったが、それもバンカーの縁に止まる。5打目で花道方向を狙って打ったが、右ラフに入った。6打目でピン上3メートルにオン。8をたたいた。長いホールになった。「きょうは言うことはないよ。(いい打ち方があったら)教えてよ」と、苦笑いしながらロッカーに消えた。通算4アンダーと首位渡辺に8打差。遠のいたといえるが、室田のようなことが誰に起きるとも限らない。

 あと1日。渡辺は言う。「最終日はこのままだと、グリーンは鉄板のようになるかな。与えられた条件の中で、必死になってやって、どうなるかですよね。七転八倒するのかな」。さて、どんなドラマが待ち受けているか。その夜、コースに雨が落ちてきた。

最終ラウンド

好対照の勝負服が輝いた2人。ここに居合わせたギャラリーは大きな拍手で健闘を称えた

好対照の勝負服が輝いた2人。ここに居合わせたギャラリーは大きな拍手で健闘を称えた

 

 渡辺司(56)が2度目の「シニアプロ日本一」に輝いた。2日目から首位の渡辺が73とスコアを落とし、この日7アンダー65で猛追した室田淳(58)と通算11アンダー277で並んでプレーオフに突入。渡辺が1ホール目でバーディーを奪って優勝し、2008年以来2度目の大会制覇で、シニアツアー通算5勝目を挙げた。室田は大会2連覇を惜しくも逃した。3位には1打差でブーンチュ・ルアンキット(57=タイ)が入った。初日71でエージシュートを達成した青木功(71)は、決勝ラウンドではスコアを伸ばせず、通算11オーバーで53位だった。

◇   ◇   ◇

 ちょっとした思い切りと、ちょっとした迷い。そんな明暗があったのかもしれない。

 プレーオフ。507ヤードの18番パー5。クラブハウスでテレビを見ていた青木功は「ティーショット次第で1ホール目で終わるかもな」とつぶやいた。
 先に室田が打ち、左のラフ(カート道)に入れる。渡辺はフェアウエー右サイド。すぐに6番と7番アイアンを持って歩き出す。

 渡辺 ティーショットを打つ前から2オンを狙うのはあきらめていたんで。(2打目で)グリーン手前のバンカーに届いちゃいけないクラブを持っていったんです。
 2打地点に行った室田。カート道を避けてドロップしたところにプレースした。残り距離は215ヤード。届く距離だった。

 室田 狙えたんだよね、距離的には。でも、左足下がりだし、狙って右に落とすのもいやだった。ライナーで手前のバンカーに入れたらまた笑われるだろうし。6番アイアンにした。

 かなり迷った。3日目に手前バンカーに入れて、壁の縁についてしまい、脱出に3打かかって8をたたいた。迷った末に、レイアップを選択した。ティーショットで思い切った決断をした渡辺と、結果的に室田は迷いを生んだ。

 先に6番アイアンで打った渡辺は「100ヤード残すつもりが97ヤード残ってしまった」と振り返る。3打目に使うアプローチウエッジの自身の飛距離は105ヤード。微妙な距離になった。レイアップした室田は残り70ヤードほどに止まった。3打目も渡辺が先に打つことになった。「実は逆目の芝で少しかんでしまった」と、ピン左下7メートルをショートした。室田はアップヒルのライだったこともあって止まってしまい、渡辺の内側につけたものの、4メートルを残した。

 渡辺 スライスしそうな、しなさそうなライン。これを外したら室田さんは入れてくると思った。18番を繰り返すと、僕の方が絶対に劣っている。先にいれたらチャンスがあると思った。1メートルオーバーしてもしょうがないという気持ちで打ちました。ここが勝負と思って。ほかの考えが消えて「打つ、入れる」だけになったのは、久しぶりですね。

 微妙なスライスラインを強めに打った。入った瞬間、渡辺は大きなため息をついた。室田のバーディーパット。打った瞬間に、弱いと分かった。カップ手前で右に切れていった。正規の18ホールでは神がかり的に入っていたパットだったが…。

 室田 入れようとして打ったんだけどね。ちょっと弱かったなあ…。(渡辺が)入れてくるから。見事だね、先に入れたのは。

 室田が渡辺の肩をたたいて祝福した。

 最終日、終盤を迎えるた時点で、こんな激闘になるとは、2人を含めて誰も予想しなかったことだった。14番を終えて渡辺が13アンダーで独走し、室田は8アンダーで2位争いの真っ最中。5打差が開いていた。ところが。室田が驚異的な追い上げを始める。15番で12メートルほどのロングパットを沈め、17番では6メートルを決める。最終18番、2オンをしてグリーンに来た。「スコアボードを見たら(渡辺が)11アンダーになっていた。あれっと思ったね」。

 渡辺は苦闘していた。「9ホールを終えたところで優勝に一番近いのは自分だと自覚して、心臓が飛び出す感じだった。5打差で自分が臆病になったのかもしれない。バーディーを取るという気持ちになれなかった」。15番でそれまでピンをオーバーするクラブを絶対に持たなかったはずが「魔がさしたのかなあ」とピンに届くクラブを選択したため「インパクトで緩めてしまった」と手前バンカーのあごに。16番では逆に「届かないクラブで思い切って振ろうとしたが今度は打ち損ねた」と手前バンカーの目玉に。あっという間に1打差になっていた。

 室田が2パットでバーディー。この時点で11アンダーで並ぶ。17番で1.5メートルのパーパットをきわどく決めた渡辺は、18番でバーディーを取れず。当事者も、ギャラリーも、思いもよらなかったプレーオフ。「ゴルフは何が起こるかわからない」が、8打差を室田が追いついて現実になった。

 最後で負けた室田 「同伴のブーンチュ(ルアンキット)がいいゴルフをしていたので、2位勝負と思ってやっていた。きょうは僕はセカンドプレーヤー。ディフェンディングチャンピオンの責任は果たしたと思うよ」

 最後で勝った渡辺 「結果がすべての世界でやらせていただいているので、途中が不細工でしたけど、優勝して全部良しとします。今日は想像していたとおりの展開。僕が1つでも落とさなければ、室田さんが強烈に追い上げても12アンダーにはできなかった。最後のパットは神様が決めてくれたと思った。今朝、お願いしておいて良かった(笑い)。2度目の優勝ですが僕がこのタイトルにふさわしい人間とは思っていません。でも、たまにやってくる機会に、こんな僕でもやれました。本当にありがとうございます」。

 硬いグリーンに悩まされ、振り落とされていった選手たち。タイトルホルダーの2人が最後に頂点を争ったのも、過酷なセッティングの公式戦ならではなのだろう。

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