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第61回(2022年)
マークセンが4日間唯一アンダーパー、完全Vでシニア17勝目を挙げる

マークセンは2度目のプロシニア制覇、通算17勝目
「第61回日本プロゴルフシニア選手権大会 住友商事・サミットカップ」は、最終ラウンド、首位スタートのプラヤド・マークセン(56)が6バーディー1ボギーとスコアを伸ばし、連日の首位を守って完全優勝。ただ1人4日間アンダーパーで回り、2位のシニアルーキー宮本勝昌に5打差をつける圧巻のプレー。マークセンは2016年以来、プロシニア2勝目で、シニアツアー通算17勝目を挙げた。日本プロシニア、日本シニアオープンと公式戦同一年度優勝したのは、髙橋勝成、中嶋常幸に続き3人目で、マークセンは2016年以来、2度目という偉業を達成した。
第1ラウンド

味があるシニアツアー3戦目で首位発進、頭角を現した宮本勝昌
シニアルーキーでツアー3戦目の宮本勝昌(50)が、上がり2ホール連続バーディーで4アンダー68をマークし、日本シニアオープン覇者のプラヤド・マークセン(56=タイ)と並んで首位に立った。1打差で清水洋一(59)がつけ、2打差4位に深堀圭一郎(53)、ディネッシ・チャンド(50=フィジー)が並んだ。冷たい雨が降り続いた影響で、アンダーパーが10人と厳しい戦いになっている。
◇ ◇ ◇
宮本勝昌はシニアツアーの雰囲気を「味がある」と表現した。
この日、本人も「味がある」プレーで首位発進になった。雨に加えて気温も12度のコンディションで午後からスタート。3番でフェアウエーから3メートルにつけてバーディーが先行した。7番でも伸ばしたが、9番で初ボギー。折り返して13番でのバーディーで3アンダーに。午前組のマークセンに1打差と迫ったが、14番でアイアンで刻んだが左のラフに打ち込み、第2打は木の枝に触ってグリーン手前にショート。ボギーにしていったんは後退した。
それでも終盤、17番で左3メートルにつけてバーディーを奪った。最終18番パー5では第3打を1.5メートル弱につけて、連続バーディーでフィニッシュ。マークセンに並んだ。
「一日中雨と気温が低い中で非常に粘り強くプレーできたと思う」という。一日の中でいい悪いはある。「流れがあるので、いい時はいいんですけど、悪い時にパーセーブする。今日はそれがかみ合った」と振り返った。どのぐらいの割合だったのだろう。「半分チャンス、半分ピンチ、でしたね」と笑った。その中での6バーディー、2ボギーだった。
8月28日に50歳の誕生日を迎えた。9月8日からのコマツオープンでシニアデビュー。ちょっと苦い思いをした。「戸惑いましたね。セカンドショットがショートアイアンかアプローチになるんで、ピンを狙いすぎるがゆえに失敗になった。気持ちが先行してしまった。いつもと違うゴルフをやっちゃったなという感じでした」と、第1ラウンド2位発進したが、第2ラウンドで73と崩れ、結局7位に終わった。2戦目の日本シニアオープンでは優勝したマークセンに10打差の6位。納得いかない結果だった。
3戦目、シニアの公式戦への思いは?「レギュラーでもシニアでも、水曜日までは意識しますけど、大会に入ったらテンションはどの大会も全部同じ」という。7月にこの大会に備えて練習ラウンドに来ている。「僕の好きなタイプのコースで、イメージが出やすい。グリーン面がいくつもあって、戦略性が高くてやりがいがある」と話した。
掛け持ちしているレギュラーツアーでは優勝争いも演じ、賞金ランク38位につけている。シニアで戸惑ったのはコマツだけだったが、うれしいことが1つ。「今日はカート乗れたので楽でした。(師匠の)芹澤(信雄)さんから『そんなこと言うのはお前だけだ』って言われましたけど、めちゃくちゃ楽でいいです。(高橋)勝成さんが前の組で歩いていて、僕がカート乗っていたら『(72歳の)勝成さんは歩いてるぞ!』って。でも僕は乗りました」と笑った。
第2ラウンドも雨予報。「今日のように粘り強くやりたい」という。それが「味がある」プレーにつながっていきそうだ。
第2ラウンド

冷たい風雨の中で66をマークした谷口徹が34人抜き2位浮上
谷口徹(54)が冷たい風雨の中で6アンダー66をマークし、通算4アンダーで2位に浮上した。プラヤド・マークセン(56)が通算6アンダーで単独首位に立っている。前日首位タイの宮本勝昌(50)は通算3アンダーにスコアを落とし、この大会に4度優勝している室田淳(67)とともに3打差3位につけている。この日は気温13.2度、北の風3.9メートル(主催者発表)で雨が降り続けるコンディションでスコアを落とす選手が続出、7オーバー57位タイの68人が決勝ラウンドに進んだ。
◇ ◇ ◇
谷口徹が「異次元」のゴルフを見せた。
「いえ、そういう訳では。きのうティーショットがラフに行って、今日はいかなくて。グリーンを1回も外さず、楽に回れたかなと」。冷たい風雨の中での6アンダー66は断トツのベストスコア。秋葉(71)と2人だけのボギーなしだった。スコアを崩す選手が続出の中で、「異次元」と表現していいのでは。
インスタートの10番でラフから4メートルにつけて1発目。17番で残り170ヤードを「5番アイアンでバチッと当たったので大きいかと思ったらぴったりだった」と30センチにつけた。18番では4メートルを入れて前半3バーディーを奪った。
この日は寒さ対策にカイロを3枚、背中、腰、肩甲骨に張ってスタートしたという。「寒いと練習した後などにおなかに来るんで、寒い時期は必需品」というが、さすがに今回は持ってこなかった。「昨日、カイロを探して買いに行ってきた。張ると冷え方が違う」と笑った。
後半のアウトではまず2番パー3、5メートルを入れた。5番では第2打残り156ヤードを7番アイアンでOKに。これで5バーディー。前日2オーバー36位から、順位がどんどん上がる。8番で5メートルを入れてこの日6つ目のバーディーになった。
攻略法は、一緒に回っている横尾を見て気づいたという。「昨日(第1ラウンド)、自分は左や右に行っていたんですけど、横尾君を見ていたら、とりあえずフェアウエーに打っておけばなんとかなると」。そんなヒントで、ガラッとスコアを変えてしまった。
掛け持ちしているレギュラーツアー、シニアツアーとも結果を出せずにいる。レギュラーでは12試合で最高が43位、予選落ち8試合、棄権1試合。シニアでは6試合でトップ10に4試合入っているが優勝がまだない。「ショットがあんまり良くない。思ったように打てない。ちゃんとしたゴルフをしたらスコアが出ると思うんですけど。体はいいけど腕が悪い」と自己評価。この日のプレーで「普通にフェアウエーに行ったら、普通にいいスコアで上がれる。久びさに楽しかった。スコアがいいとゴルフは楽しいですね」とあらためて気づいたのも、これからにつながりそうだ。
「(前日)自分のスコアが悪かったから、今朝、宮本君に『マークセンをやっつけてね、任せたね』といったんだけど」と笑った。今度は自分がマークセンをやっつける立場になる。「手強いですからね。普通では勝てない。かなりパットが入れないと。マークセンは近いところから打つから、遠いところから入れないと。そういうゴルフが出来たら勝てるかもなあと思いますけど」といった後、「勝てる気がしない」と笑った。
公式戦へのこだわりはないというが、1つ引っ掛かっているものがある。「これで取ったら手嶋多一に自慢してやる。(手嶋は)日本プロも日本オープンも1回ずつしか勝ってないんですよ。僕は2回、3回勝っていて、僕の方が全然上なんですけど(笑い)、あいつと一緒(2冠)みたいに言われるのがしゃくで」。そのためにも、この「日本プロシニア」タイトルを手に入れたい。
第3ラウンド

鉄人・室田が4バーディーノーボギーで首位1打差2位に食らいつく
室田淳(67)が惜しくもエージシュートを逃したが4バーディーノーボギーの68で回り、通算4アンダーで、首位を走るプラヤド・マークセン(56=タイ)に1打差の2位に上がった。宮本勝昌(50)が2打差3位につけている。3打差4位で谷口徹(53)と、実力者が上位を占めて面白い展開になった。
◇ ◇ ◇
室田淳が、何度も悔しそうに天を仰いで目をつぶる。最終18番で5メートルほどのバーディーパットが、カップの左縁に触って抜けた。このパットが入れば67。昨年ISPSハンダで66、今年はコマツオープンで67をマークし、シニアツアーで3度目のエージシュートとはならなかった。
同組の谷口が「室田さん、何で『プレッシャーがやばいな』とか言ったのかなって、明日あるのにと思っていたらエージシュートのパットだったんですね。僕は全然分かっていなかったです(笑い)。エージシュートはそんなにプレッシャーかかるんですね、経験したことないから(笑い)。優勝パットの方がプレッシャーかかると思っていましたけど、エージシュートもなんですね」と、その場の雰囲気、緊張感にちょっとびっくりしたようだ。
エージシュートを出せばマークセンに並べたが、1打差2位の好位置にはつけた。「1センチ、左に引っ掛けたよなあ」と室田はため息をつき「まっすぐのいいラインだったのよ。ああ、何回外すんだろう」と、エージシュートのチャンスを何度か逃してきたことも思い出して悔しがった。
4バーディー、ボギーなしのゴルフを「3回ピンチがあったけどね」と振り返る。1回目は4番。グリーン奥のバンカーに入れたが、問題ない距離に寄せた。2回目は13番。右に打ったがフェアウエーを突き抜けてラフに入ったが切り抜けた。3回目は16番パー3(178ヤード)。「1クラブ間違った」と6番アイアンでキャリーでグリーンオーバーして最大のピンチ。2メートル強ショートしたがパーパットを入れた。ピンチを乗り越えてきただけに、最後のパットが悔しかったのだろう。
「今日は同組の2人(谷口、マークセン)に30ヤードも先に行かれて。こっちはついていくのがやっと。2人に迷惑をかけないように、ガチャガチャ、やらないようにしたよ。60歳を過ぎたらもうアマチュアの感覚だよ」と、優勝争いに加わって口は滑らかだ。
9月の日本シニアオープンで痛めた背中は、2週間の休養で問題なさそう。その間にドライバーを新しくして、今大会に臨んでいる。「火曜日(4日)に届いた。新製品のステルスグローレ。使ってみたらよかったから。でも、飛距離は何を使ってもおんなじだけどね(笑い)。道具でもそうそう伸びないよ。そんな甘くない」というが、この3日間で新兵器への手ごたえを感じているのは確かなようだ。
今季は既に60歳以上の日本プログランドシニアを制している。この大会に勝てば、初の同一年日本プロタイトル2冠になりますが。「マークセンがいいんじゃないの。今日はいくつかミスが出たけど、フェードボールに変えてから安定感抜群やな。もう余裕だよ。スイングに無理がないからさ、なんであんなに飛ぶの? あと宮本だろ、やだ、やだ。おれはマイペースで行きます。2人は適当にやってくれ」。エージシュートが出れば行けるかもしれませんが。「成り行きだな」。いい成り行きを期待したい。
最終ラウンド

通算13アンダーで逃げ切り、完全優勝を飾ったマークセン
プラヤド・マークセン(56=タイ)が、通算13アンダーで逃げ切り、第1ラウンドから首位を守る完全優勝で、今季2勝目、通算17勝目を挙げた。日本シニアオープンとプロシニアの同一年日本タイトル2冠は過去3人(髙橋勝成、中嶋常幸、マークセン)が記録しているが、2016年以来自身2度目となるのは初の快挙で、今季賞金ランクトップに立った。5打差2位に宮本勝昌(50)、追い上げた谷口徹(53)が3位に入った。2位スタートの室田淳(67)は5位に終わった。
◇ ◇ ◇
マークセンはスタートから30分ほどで勝負を決めた。
1番パー5。第2打でグリーン横のフェアウエーに運び、アプローチで1メートルに寄せてバーディー発進。
2番パー3。右奥のピンを狙って手前2メートル弱につけ、決めてバーディー。
3番パー4。フェアウエーからピン左上4メートルほどにつけて3つ目のバーディー。
3連続バーディーで、スタート時点で1打差2位の室田淳、2打差の宮本勝昌を突き放した。この3連発で勝てると思いましたか? 「ハイ。室田さん、宮本さんが(そこから)どういうゴルフをするか分かりませんでしたが、自分の調子がいいので行けそうだと思いました」と、振り返った。
この日はいつもより早く、スタート時間の2時間半ほど前にクラブハウスに来た。「早くやりたくてしょうがなかった」という。気持ちも乗っていたようだ。
4番以降、チャンスを外してちょっとイラっとしたような表情も見せたが、それもパットを外した一瞬だけで、あとは室田、宮本と談笑しながら終始にこやかにプレーした。11番でバーディーを取り、パーを重ね、16番パー3では2メートル強を入れてダメ押しと言えるバーディー。17番でグリーン右手前のラフからのアプローチが寄らず、初ボギーをたたいたが大勢に影響はなかった。最終18番ではティーショットを打って歩いている途中で室田が近づいて握手を求め「おめでとうと言われました」という。最後はバーディーを取り返して締め、宮本に5打差をつける完全優勝を達成した。
今回の勝因は「3番ウッドの調子がよかったことと、パターを替えたこと」だという。空き週にタイに戻って、3、5番ウッドを最新のステルスにしてシャフトを調整してきた。「今日も3番ウッドをティーショットで6、7回使った」と、ラフが深く、フェアウエーキープをいつも以上に求められるコースで威力を発揮した。パターはオデッセイ#5から#7に替え「狭かったスタンスを広くしたら調子が良くなった」という。
9月の日本シニアオープンに続き、シニアの日本タイトルを同一年に制した。同一年2冠は、高橋勝成(2000年)、中嶋常幸(2006年)、マークセン本人が日本デビューした2016年に達成している。今回2度目の日本2冠が初めてと知り「そんなすごいことをしたんですね。日本シニアオープン3連覇(2016~18年)と同じぐらいすごいことだと驚いています」とびっくりしてみせた。
これで賞金ランクもトップとなり、2位藤田寛之に263万円あまりの差をつけて逆転した。2018年以来4度目の賞金王も視野に入ってきた。
とにかく「丈夫」だ。コロナ禍の制限が緩和されてきた今季は5、6月にアジアンツアーを回り、夏場からはシニアツアーに参戦している。シニアツアー最終戦を終えるとまたアジアンツアーに戻る。年間どのぐらい試合をこなすのだろう? 「いっぱいあって分からない」と笑った。それで体は大丈夫? 「はい、どこも痛くありません。明日天気がよければ、ゴルフをしたい」とまた笑った。
笑顔が絶えない。笑顔の練習をしています? 「ウィラチャンのようにはやっていない(笑い)。ただ、私が笑っていなかったら、疲れているんだと思ってください」。日本勢にとって、マークセンが笑顔のうちは、打ち負かすには苦労しそうだ。