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2016年
蛭川隆が通算10アンダーでトップ合格! 通算4オーバー・48位タイまでの55選手がプロテスト合格

2016年度PGA資格認定プロテスト・最終プロテストは、福岡県のザ・クラシックゴルフ倶楽部キング・クィーンコースで行われた。トップ合格を果たしたのは、通算10アンダーでフィニッシュした蛭川隆。2位の小浦和也に3打差をつけ、ただ一人二桁アンダーパースコアをマークした。合格者は通算4オーバー・48位タイまでの55名。全選手ホールアウト後に合格者たちは、記念写真を撮影し、説明会に参加。プロテスト合格を実感しながら、帰路に向かったのだった。合格というゴールテープを切った時から、プロとしての新たなスタートが始まる。さらなる成長を祈るばかりだ。
第1ラウンド

悪天候の中、小浦は4バーディー・ノーボギー68は実力の証明
4番ホールで1メートルのバーディーパットを沈めた。5、10、15番ホールでは4、5メートルほどのバーディーチャンスを確実にゲットし、4バーディーを奪取。ボギーは一つも打たず4アンダー首位タイでフィニッシュ。小浦和也は好スタートを切ったものの、表情が硬い。
「ほかにも3回は決められるバーディーチャンスがあり、それを沈められなかったのが悔やまれます。それでもノーボギーで流れを崩さず、ラウンド出来て良かったですね」
第1ラウンドは土砂降りになったり、強風が吹き荒れたり、晴天になったりと目まぐるしく天候が変わるコースコンディション。そんな状況に対応するため、小浦はあえて一番手上の番手を選択し、今パクなスイングと低い弾道でパーオンして行った。グリーンの軟らかさを考慮しての攻めだった。それでも突然の強風と強い雨でボールがあらぬ方向へ持って行かれるピンチもあった。
「12番ホールのパー5でティーショットが右の林に捕まり、4打目のリカバリーショットをピンそば1メートルに着け、パーセーブできたのが大きかったです。決して恵まれた天候ではありませんでしたが、ノーボギーゴルフは明日からの3日間につながると思います。まだ初日ですから、気を緩めず、残り54ホールを丁寧に大切にプレーして行きたいです」。
今回の出場選手の平均年齢は27・2歳。小浦は23歳。若手ながら日本オープンでのローエストアマ・タイトル奪取2回の実績が、底力を感じさせる。残り3日間も最終プロテストの主役を演じるに違いない。
第2ラウンド

「感謝の気持ちを忘れず、最善を尽くす」と誓う杉山
前日の第1ラウンドでは西の風5・5m/sが吹き荒れ、選手たちを苦しめた。アンダーパースコアをマークしたのは151選手中24選手。その一人だった杉山知靖は「風に対応しようと低い球を意識し過ぎてショットを左に引っ掛けることが多かったんです。それでホールアウト後に、球筋をドロー系からストレート系にしてショット練習をした」という。
コースでは様々な球筋、弾道を打ち分けて対応しなければならない。しかし、それによって本来のスイングを乱したり、狂わせたりする。コースは順応力、対応力、そして修正力の高低が試される場でもあるのだ。
第2ラウンドもまた風が吹き続けた。前日よりもさらに強まり、西の風6m/s。杉山は前半を1バーディー・1ボギーで切り抜けると、後半3バーディーとし3アンダー・68で上がり、通算スコアを4アンダーに伸ばすことに成功した。
「ショットが風の影響を受けることが少なくありませんでしたが、風向きを意識してプレーするようにしたのが奏功したと思います。後半はグリーンを外したのが1ホールだけでした」と風ゴルフの対応力、順応力の高さを伺わせるコメントを残した。
「第1ラウンドは緊張しましたが、同伴競技者にも恵まれて第2ラウンドは互いに打ち解けたのも好スコアにつながったのかも知れません」。
杉山は中央学院時代に日本アマチュアゴルフ選手権で決勝に駒を進め、あと1勝でアマチュアゴルファーの頂点に立つチャンスを得た。しかし、対戦相手の大堀裕次郎に敗れ、涙を飲んだ。その戦績で今最終プロテストを受験したのだが「日本プロゴルフ選手権への出場資格を頂けるトップ通過が目標です。でも、ハイレベルな選手が多く、決してやさしくはありませんね」
目標達成のため、最終プロテスト開催1週間前に現地入りし、火、水、金、土、月曜日に入念な練習ラウンドをして準備を整えた。幼稚園時代から内田豊プロにゴルフを教わり続けて来たが、大学4年時に首痛に襲われた。良く知る女子プロゴルファーから室田淳、芹澤信雄の専属トレーナーを務める平野氏を紹介され、月に1回の直接ケアと自主トレーニングで体調を鍛え、整えている。心身ともに万全で挑む最終プロテスト。
「ここに立てるのも、たくさんの方々に支えてもらって来たからこそだと思っています。結果で恩返しできたら最高です。明日からの二日間も感謝の気持ちを忘れず、最善を尽くすだけです」と杉山。プロもアマも関係なく、その真摯な姿と言動は、ゴルファーの鑑だ。
第3ラウンド

66を出した山梨の若武者・長澤が、明日は爆発スコアを出す!?
「今日は前半だけでなく、後半もスコアを伸ばせました。2日間とも前半はスコアを伸ばせても後半にスコアを落とすゴルフが続いていたので嬉しい結果です」
通算イーブンパー・25位タイからスタートした長澤奨、19歳。第3ラウンドは前半3バーディー、後半4バーディー・2ボギーの66にスコアをまとめ、通算5アンダー・6位タイに浮上した。
ゴルフ好きの父・廣道からゴルフの手ほどきを受け始めたのが3歳の時だった。兄・稔はツアープロして今週はフジサンケイ・クラシックに出場している「ゴルフ一家」だ。
16歳の時には並み居るプロを退けて山梨オープンを制し、14年から2年連続で山梨県アマチュアゴルフ選手権覇者に輝いた実績を持つ。ベストスコアはパブリック選手権予選会でマークした62。爆発力も秘めている。
身長180センチ、体重90キロ。恵まれた体格を生かしたドライバーショットが武器にように思えるが、「ドライバーよりもピッチングウェッジが得意クラブなのです。今日はピッチングウェッジが切れまくってくれて、バーディーを量産できました」と長澤は白い歯を見せた。
ゴルフキャップを頭に乗せただけのような姿が、どこか愛らしいが、プレー自体は豪華さと力強さを備える。「プロゴルファーになって兄と優勝争いをするのが夢の一つです。もちろん、僕が勝つようにします(笑)」。屈託ない笑顔は、まだ10代の若者そのものだ。第4ラウンドでベストスコア更新となれば、トップ合格も手にできる。爆発ゴルフを期待したい。
最終ラウンド

ダブルボギー発進ながら見事カムバックし、首位を死守した蛭川
第1ラウンドは1オーバーと出遅れた蛭川隆は、第2ラウンドで66、第3ラウンドでは67をマークして通算8アンダーの単独首位に立った。
第4ラウンドは最終組。緊張感はそれほどなかった。目指すは来年の日本プロゴルフ選手権の出場資格を得られる「トップ合格」あるのみ。1番パー4ホールのティーショットをフェアウエイへ確実に運んだ。ピンまで残り165ヤードの第2打。9番アイアンで打ったボールはグリーンをオーバー。フライヤーしたのだった。「170ヤードは飛びました」と蛭川は振り返る。
寄せの第3打でグリーンを捕えられず、結局4オン2パットのダブルボギー。しかし、焦りはしなかった。そんなミスも想定内だったのだ。
蛭川は中学2年から地元・鹿児島のティーチングプロである佐藤直輝にレッスンを本格的に教わり始めた。大学へ進学したものの、一日も早くプロ転向したい思いが募り、中退してプロゴルファーへの道を歩み出した。昨年11月にプロ転向し、今年2月からは九州サーキットに出場して試合勘を養った。目前の目標をプロテストに定め、研鑚を積み、54ホールのプロテスト第2次では通算16アンダーでトップ合格。何よりも代えがたいプロとしての自信を深めた。
最終プロテスト第4ラウンドを首位で迎える。前夜、師匠で佐藤にアドバイスを求めた。「前半9ホールは準備運動でしかない。勝負は後半9ホールだ」。その言葉を胸に刻んでいただけに、スタートホールでのダブルボギーは、決して焦る理由にはならなかった。むしろ、悪いものすべてを吐き出せたような気持ちになれた。いい意味での開き直りだ。
最終組の同組でラウンドする小浦和也との2打差は1ホールで無くなった。日本オープンでローエストアマに2年連続で輝いた実力者。だが、それはアマチュア時代での戦績でしかない。小浦とは昔から練習ラウンドをことあるごとに行うほどの仲であり、どんなプレータイプかも熟知していた。
蛭川は4、5番ホールで2連続バーディーを奪うと、8番ホールでもバーディーパットをねじ込み、前半を1アンダーで終えることができた。ハーフターン後、12番ホールでもバーディーを奪った時点で、小浦とは3打差が着いていた。残り6ホールを無難に回れば同組では一番のスコアでフィニッシュできる。逃げ切れる。クラブハウスリーダーの通算スコアはわからない。二桁アンダーの選手はいないと試合の流れを蛭川は読んだ。
最終ホール。またしてもパーオンを狙ったアイアンショットがフライヤーし、グリーンをダイレクトオーバー。左足下がりのラフ。ピンまで15ヤードのピンチを迎えた。
小浦はワンピンのバーディーチャンスに着けていた。その差は3打。ショット次第では小浦にスキを与えてしまうピンチ。
「緊張はしていませんでした。痺れていませんでしたね。それよりもチップインバーディーで決着を着けようと思ってアドレスに入ってくらいですからね」
蛭川はピンに確実に寄せ切り、小浦のバーディーパットは入らず、両選手の戦いは幕を閉じた。通算10アンダーで蛭川はフィニッシュし、スコアカード提出所で首位であることを知った。
「トップ合格できて本当に嬉しいです。出場した選手の中で、僕が誰よりもトップ合格するんだと思い続けて来たと思うんです。ようやくつかんだこのチャンス(日本プロ出場)を生かし、プロとして成長していきたいです」
20歳のプロゴルファーが、さらに羽ばたく。トップ合格という自信を身に着けて――。