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(2021年)
プレーオフの末、地元角田が大会初優勝!初代女子チャンピオンは高木

角田博満と高木亜希子が大会初優勝!
「第23回PGAティーチングプロ選手権大会、第1回PGAティーチングプロ女子選手権大会 ゴルフパートナーカップ2021」は、福島県・矢吹ゴルフ倶楽部にて開催された。
PGAティーチングプロ選手権大会は、首位スタートの酒井柾輝(27・A)と角田博満(42・TP-B)が通算4アンダーで並びプレーオフへ。18番パー5ホール繰り返し2ホール目で、角田が2メートルのバーディーパットを沈め、大会初優勝を飾った。
角田は地元福島県鏡石町出身。優勝賞金として100万円と、ゴルフパートナー特別賞として30万円を受け取った。優勝副賞にはミドリ安全 「MIDORI PF1」腰部保護ベルト一体型ゴルフパンツと、ソニーネットワークコミュニケーションズより「スマートゴルフセンサー」が贈られ、さらに2022年日本プロゴルフ選手権大会の出場資格も獲得した。
PGAティーチングプロ女子選手権大会は、高木亜希子(45・B)が通算7オーバー、2位に8打差をつけ初代チャンピオンに輝き、高木は優勝杯と優勝賞金10万円、さらに優勝副賞として 「MIDORI PF1」と「スマートゴルフセンサー」を受け取った。
第23回ティーチングプロ選手権
第1ラウンド

酒井柾輝が2アンダー首位初日スタート
ティーチングプロ日本一のタイトルをかけて120名が戦いに挑む第1ラウンド。矢吹ゴルフ倶楽部の難グリーンに苦しめられる中、酒井柾輝(27・A)が2アンダーで首位。1アンダー2位には大山トギ(37・A)、大木昌幸(50・A)、角田博満(42・TP-B)の3名が続く。同時開催している女子選手権は4名が参加し、高木亜希子(45・B)が76ストローク、4オーバーで首位発進した。
◇ ◇ ◇
大会舞台の矢吹ゴルフ倶楽部が牙をむいた。北西5メートルの風、気温13度の寒さ。グリーンは日照時間を重ねるごとにスピードを加速させて行く。大会初日の平均ストロークは76.550。出場選手120名中、5バーディー以上を奪取した選手は、大田剛と酒井柾輝の二人だけだった。大田は1イーグル・4バーディーながら5ボギー・1ダブルボギーと出入りの激しいゴルフで73の1オーバー・フィニッシュ。一方の酒井は5バーディー・1ボギー・1ダブルボギー70の2アンダーにスコアをまとめ、単独首位に立った。「(4つの)パー5ホールでバーディーを取れましたし、ボギーピンチを迎えてアプローチとパットが良かったお陰です」。酒井は淡々と応えた。
東京国際大学ゴルフ部在籍中に、ティーチングプロ資格を取得。大学卒業後にアコーディアに入社し、現在はアコーディア・ガーデン水戸でレッスン業に勤しんでいる。「TCP選手権は自分にとって1年に一度のビッグイベントであり、楽しみなトーナメントです。これまで3回挑戦し、いずれも予選会どまりでした。4回目の今回、初めて決勝大会に駒を進められました」。
予選会落ちの理由は、大会初日に大叩きをしてしまっていたからだ。試合ならではの緊張感が、酒井らしさを打ち消す。最大の緊張感に襲われたのは高校2年生の時に遡る。関東アマチュアゴルフ選手権の2次予選会でのこと。通過できそうなスコア、順位だったことから、極度の緊張感に襲われた。開催コースの小金井CCのグリーンが超高速と化した。ボールが止まりそうに感じ、打ち出せない。パターヘッドを振り出せない。パットイップスに見舞われたのだった。様々なパターを試したり、打ち方を変えたりの荒療治を繰り返し、徐々に収まったものの、完治はしていない。「一番の療法は、パット練習をしないことでしょうか。今はアームロックでのストロークでパットしています。試合となると、イップスが燻って来ますが、今日はショットも寄せが良く、パットも決まっていたので大丈夫でした」。
アウトコースからスタートした酒井は2、6、9番ホールでバーディーを奪い、3アンダーで後半インコースへ向かった。後半1バーディー・1ボギーで迎えた17番パー3ホールが鬼門と化した。フォローの風向きと読み、170ヤードの距離を7番アイアンでティーショットした。打ち出した瞬間、アゲンストの突風がボールを押し返し、グリーン手前の池に波紋を描いた。痛恨のダブルボギー。「結果的には何十ヤードも距離を間違えたクラブ選択だったということでしょうね」。不運を冷静に分析してみせた。18番ホールはパー5ながらこの日の平均ストロークは5.408。ボギーの可能性が低くなかった。それでも酒井は3打目でピン1メートルに着けてバーディーフィニッシュを決めた。
「パットが決まってくれるとスコアは出せますよね。明日も流れを掴めたら(優勝)チャンスはあると思います。一打の重みを感じながらプレーするだけです。イップスですか? こればっかり経験を積み重ねて克服するしかないと思っています」。
初優勝のビッグチャンス。勝利がイップスの特効薬となるに違いない。
最終ラウンド

福島の熱い想いを胸に、念願の優勝杯を手にした角田
最終ラウンド、最終日のプレッシャーと難グリーンに悩まされる中、首位スタートの酒井柾輝(27・A)と地元福島出身の角田博満(42・TP-B)が通算4アンダーで並びプレーオフへ。18番パー5ホール繰り返し2ホール目で、角田が2メートルのバーディーパットを沈め、大会初優勝を飾った。
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正午近くになって天気予報どおりに小雨が降り始め、やがて本降りとなった最終日。前日の強風下でのゴルフを強いられた出場選手たちが、どんなプレーを繰り広げるのかが楽しみだった。
通算2アンダー単独首位に立った酒井柾輝は1、2番ホールで連続バーディーを奪い、独走態勢に入りそうな勢いを着ける。だが、それにブレーキを掛けたのが1打差2位タイからスタートした角田博満だった。3番パー4ホールでバーディーパットを決めて、酒井とは2打差に詰め寄る。5番パー4ホールで酒井がボギーを叩き、1打差に縮まる。
ドラマは8番パー3ホールで幕を上げる。角田はロフト26度のユーティリティー(UT)クラブでティーショットした。ボールはピン方向へ向かって行った。が、しかし、一緒に飛んで行ったものがあった。クラブヘッドだった。「ホーゼルがちょっと浮いていたので、抜け飛ぶかも知れないという予感はありました。でも、まさか……でした」。その動揺を封じ込んで、角田はバーディーパットをカップに放り込み、首位の酒井をついに捕らえたのだった。「サブのUTは用意していなかったので、残り10ホールは13本のクラブで戦うことを覚悟しました」。
9番ホール以降、角田と酒井の一騎打ちが始まる。13番パー5ホールは両選手ともにバーディーを奪取。通算4アンダーにスコアを伸ばし、首位に座を譲らない。スコアはそのまま動かず、勝負の行方は18番パー5ホールでのプレーオフ(PO)へと持ち込まれる。
PO1ホール目。酒井はツーオンを果敢に狙ったものの、グリーン手前から右サイドに広がる池に水面に波紋を描いたのだった。その一打を見た角田は、3打目勝負に出る。2打目をレイアップした。ボールはフェアウエイ左サイドを捕らえたものの、角田にとってはミスショット同然だったのだ。
東京箱根間往復大学駅伝競走。「お正月に箱根路を走る箱根駅伝の選手になりたくて、創価大学に進学し、陸上部に入ったんです。当時はまだ予選会を勝ち上がれず、しかも僕は補欠選手でした。夢は叶いませんでした。大学卒業後に、ゴルフを本格的に始めました」。実家の隣がゴルフ練習場で、遊び半分でクラブを振ったことはあった。父親の許しを得てプロゴルファーを目指したのだった。2009年、30歳でPGAティーチングプロB級ライセンスを取得。レッスン生が集まり始め、角田を支援してくれるスポンサーも見つかったことからトーナメントプロ資格取得を目指して2014年、35歳の時に一発合格を果たした。角田は遅咲きプロゴルファーでもある。
「ツアーには14年、17年のダンロップ・スリクソン福島オープンに出場した経験があります。14年大会では74・81の予選落ちでした。ドローボール一辺倒で、グリーンに止まる球を打てなかった結果です。それを機に持ち球をフェードに変えました。グリーンに止めやすく、コントロールもしやすい。もう7年経ちますね」。
フェードボールで攻め続けた。角田は大会開催コースの矢吹ゴルフ倶楽部でラウンドレッスンすることが多い、年に50回以上を数える。実はこの大会は角田にとって地元開催だったのだ。コースの隅々まで知っている強味もあった。それだけに「優勝して日本プロゴルフ選手権に出場したい」という思いは人一倍強かったのかも知れない。
PO1ホール目、レイアップしての3打目はピンまで残り90ヤード。大誤算だった。「いつも通っているゴルフ練習場は80と100ヤードの距離看板で、90ヤードがない。だから苦手距離でした。それに2打目をヘッドが抜けたロフト26度のUTだったら残り80ヤードまで運べたんですけどね」。角田は3打目をグリーン左サイドのバンカーに打ち込み、寄らず入らずのボギーで酒井と同スコアに終わる。
勝負のPO2ホール目。コースを良く知る角田はティーショットをフェアウエイ右サイドに運んだ。酒井も同方向へ打ち出したものの、右方向へ大きく曲げ、松林に打ち込んだのだった。
「Risk&Reward(危険と報酬)」。角田は危険を回避してツーオン成功という報酬を、酒井は危険を回避できず、打数を重ねた。「あの右サイドに打つには勇気が必要なんです。うまく行けばツーオンしやすい。でも右にフカしやすく、松林のワナが待ち受ける。これまでもう何十回も打ったことがありましたから」と角田は白い歯を見せた。イーグルパットは外したものの、短いバーディーパットを沈めて優勝を飾ったのだった。「矢吹ゴルフ倶楽部のスタッフの方々には、いつもお世話になっているので、優勝で少しは恩返しできたかも知れません」。浮ぶ涙を抑えながら、角田は優勝を喜んだ。
「ティーチングの仕事を通して一人でも多くのゴルファーに楽しさを伝えたいし、ゴルフを始めたいという人を増やして行きたいです」。そう言って腕時計を覗き込んだ。「ごめんなさい。18時からレッスンが、子供たちが待っているので向かっていいですか」。足早に角田は駐車場へと向かった。優勝賞金パネルを手にしていた。ジュニアゴルファーたちへの優勝報告を一番の楽しみにしていたようだ。福島県に熱いティーチングプロがいる。それを知らしめる一戦に角田は仕上げたのだった。
第1回ティーチングプロ女子選手権
第1ラウンド

記念すべき第1回大会女子選手権で高木が初日首位
第1ラウンドで首位に立ったのは高木亜希子。アウトコースからスタートして2番パー5ホールで大会初のバーディーを奪取した。5番パー4ホールをボギーとしたものの、前半をイーブンパーで回った。「ショットが悪いながらも得意のショートゲームでカバーできて良かったのですが……」。
PGAゴルフ史に刻まれる「女子選手権」初日をラウンドした感想を尋ねると、明快にホール・バイ・ホールを応え、ハキハキした受け答えが印象的だった。その高木が、最適な言葉を探したものの、まったく見つからない。ようやく見つけ出した言葉は、「スイングがどこか気持ち悪く、ショットはOBなしながらの許容範囲内に何とか収まっていたという感じでした。後半に入ってからは風が強まり出してパーオンできず。さらに難しいポジションから寄せを打つケースが多かったです」。後半は4ボギー。結局、1バーディー・5ボギー76でホールアウト。4オーバーながら単独首位に立った。
PGMマリアゴルフリンクス所属の高木は、リンクス風のコースでレッスンしていることから、大会開催コースは「花道があってホールデザイン的には難しさはそれほど感じませんでした」という。首位に立ったものの、悔しさが残る一日だったようだ。「今日のショット内容で耐えたラウンドだったと思います。パープレーで回りたかった。明日(最終日)こそ、パープレー以上で回りたい!です。気温が低く、寒さから飛距離が落ちるのは覚悟しています。リズムを崩さず18ホールを回り切れば…」。
その結果は自ずとついて来る。第1回大会優勝は、大会史に刻まれる。いつまでも最初にその名が残る。最高の栄誉、名誉だ。
最終ラウンド

会心のバーディーフィニッシュ!高木が初代覇者の夢を叶える
2位に3打差を着けての単独首位で迎えた最終日。高木亜希子は、明確な目標を立ててスタートティーに立った。「3打差を守ろうとはしない。5打差に引き離すつもりでプレーしよう」。守りのゴルフでは、弱気になってしまう。それを避けるためだった。
前日はバーディーを先行させたものの、その後はボギーが続いてスコアを落とした。
その流れを切れないままのプレーを最終日も繰り広げる。アウトコースからスタートし、4、6、8番ホールでボギーを叩く。前半は3オーバーの39。気持ちに焦りが生じ始める。残り9ホールをうまく乗り切ったならと望みを持って後半に臨む。10、11番ホールでパーをセーブ。12番パー4ホールでピンチを迎える。パーオンを逃しての3打目はピンまで40ヤード。それを50センチにピタリと寄せ切り、ボギーを回避したのだった。続く13番パー5ホールでは、パーオンはしたものの4打目のバーディーパット距離は15メートルもあった。カップまで2.5メートルにショートする。再び迎えたパーセーブのピンチ。それでも高木はパーパットをねじ込む。
「残り5ホール。今までどおりボギーを抑えたら勝てる。セーフティーを最優先させてプレーしよう」。高木は初代覇者になることを目指していた。プロテスト合格を目指して来たが、夢は叶わなかった。PGAが女性会員を募ることを知り、自分のゴルフを磨くことから、他人のゴルフ力を向上させることにシフトする決断を下した。それでも、試合という独特の緊張感を楽しみたい思いは消えていなかった。
迎えた最終18番パー5ホール。スコアを伸ばせなかったジレンマを感じていた。「最終ホールだからこそ、バーディーを奪ってみせる」。3打目はピンまで残り87ヤード。ピッチングウェッジで放ったショットはピンに向かって真っすぐに飛んで行った。ピン手前2メートルのバーディーチャンスを作り上げ、しっかり決めてバーディーフィニッシュ。「会心の締めくくりが出来て良かったです」。緊張していた表情がようやく柔和になった。2位に8打差を着ける通算7オーバーでの優勝を高木は、こう話す。「初代チャンピンであることが、これから名誉になるように女性会員が増え、そして来年は大会連覇をしたいです」。
優勝インタビューで高木の視界に優勝トロフィーが入った。「あんなに大きいトロフィーなんですか?」と声を上げた。女子選手権は、その隣のクリスタルトロフィーだとスタッフから教えられて苦笑い。「女子も大きな優勝トロフィーになるように、私たち女性会員がドンドン活躍していかなければならないと改めて感じます。ゴルフを教え始めたばかりですが、お客様の喜び様が自分の喜びになっています。これからも教え方も自分のゴルフも向上させていきます」。高木の優勝を祝うLINEメッセージ着信音は鳴りっぱなしだった。
優勝インタビューを終え、椅子から立ち上がり、再び優勝トロフィーに視線を向けて、小さな声で呟いた。「いつか女子選手権もトロフィーに変わった時、私の名が一番上に刻まれますよね」。初代覇者の実感が沸いた一瞬だった。