過去の大会PAST TOURNAMENT
過去の大会レポートLAST TOURNAMENT
(2022年)
小西勇輝が逆転で最年少優勝!女子選手権は高木亜希子が連覇

TCP女子優勝の高木と、TCP優勝の小西
「第24回PGAティーチングプロ選手権大会 新宝塚CC杯」は、最終ラウンド、タフなコースでスコアが伸びない中、5位タイスタートの小西勇輝(25・B)が5バーディー・1ダブルボギーの67とし、通算2アンダーで大会初出場、初優勝を飾った。第2回女子選手権は高木亜希子(46・B)が首位の座を守り完全優勝、大会連覇を達成した。
第24回ティーチングプロ選手権
第1ラウンド

2017年大会覇者の澤口清人が2アンダー首位タイに並ぶ
「この秋シーズンにグリーンコンディションを最高の状態に仕上げてくださって、コースのクオリティの高さに歯が立ちません(笑い)。ピンポジションも手前エリアが多かったので、マネジメントとグリーンスピードにかなり苦戦しましたし、最後まで必死でした」としのいだ一日を澤口は振り返った。2017年大会覇者も予選会を勝ち抜いてきた。「歴代チャンピオンとして、下手なプレーは見せられない」とプレッシャーもかかる日々だった。第1ラウンドを終えて「安全にマネジメントに徹しました」と首位に並んだ一日を振り返った。
アウト1番ホール最終組で朝10時にスタートした。コースは強風が吹き荒れている状況だった。1番パー4は484ヤードの上りホールで、風向きによっては難易度が高くなる。
澤口はようやく3打目をグリーンオンし、2.5メートルのパーパットをしっかりと沈めた。「スタートホールからしびれました。スーパーパーセーブがあったから、残りのホールも乗り切れました」と澤口は振り返った。3番パー5では奥から2メートルをバーディーでスコアを伸ばす。前半最後の9番パー3は打ち下ろしのレイアウト。しかし練習ラウンドでは経験しなかった突風が吹き、ボールは池へ吸い込まれダブルボギーと不運が重なってしまった。後半は風や雨に見舞われさらに試練がつづいたが、澤口はドライバーショットを低く打ち出し、フェードというよりもインテンショナルスライスを打ち分け、3つのバーディーを奪取し、68ストロークで首位タイに並ぶことができた。
2018年に房総カントリーで開催された日本プロに出場した。夢のステージであこがれていたツアープロと共に戦ったが78、74でカットラインに5打足らず予選落ち。応援に駆けつけてくれた狭山ゴルフ・クラブのメンバーさんたちには申し訳ない気持ちで一杯だった。しかし、この時にティーチングプロ選手権優勝者が挑んだ歴史の中では、カットラインにあと5打というベストスコアという成績。澤口の悔しい経験は、今年の絶対的な自信になって今に生きている。
「今回はトップ10入りできれば、ベストかなって思っているんです」と澤口は謙虚な思いを口にした。日本プロで悔しい経験をしてからというもの、ツアーへの想いはますます強くなった。しかし明確な「優勝」を打ち出すと、プレッシャーからか成績はますます遠のいていった。「予選会の成績では『優勝』はおろか、自分のゴルフがわからなくなっていました。そこでゴルフの基礎を見直したことにしたのです」。澤口は改革の時期だと受け止め、マネジメントを徹底させることにした。例えば100ヤード以内であればピンを狙う。120ヤード程度の距離は、グリーンセンター狙いで十分だという指標を守る。そうした一連の流れによって、バーディー4、ダブルボギー1で最小限にミスを抑え、初日首位タイスタートを切ることができた。
澤口は22歳の研修生時代から所属する狭山ゴルフ・クラブにかれこれ18年お世話になっているという。4年前日本プロ出場で、会場にクラブメンバーさんが応援に駆けつけてくれたことに感謝を忘れないでいる。「できれば優勝をして、まだ日本プロに挑んでみたいですが、今は自分にできることをきっちりやり抜きたいです」と悔しさを今年の好発進に生かしたい。
最終ラウンド

PGA入会1年目の小西勇輝が通算2アンダーで25歳最年少Vを飾る
最終ラウンドは、首位と3打差、5位からスタートした小西勇輝が5バーディー1ダブルボギーの67とし通算2アンダーで大会初出場、初優勝を飾った。25歳での優勝は大会最年少記録を更新。首位3打差2位には2017年大会覇者の澤口清人(41・狭山GC)がフィニッシュした。
◇ ◇ ◇
第1ラウンドは首位2アンダーに力丸勇気と澤口清人が並び、首位と3打差には14名がひしめく大混戦。雨風が影響したことで、コンパクションが仕上がって、コース攻略が難しくなった中で、小西は3バーディー・4ボギーで初日を終えていた。
最終ラウンドがスタート。インターネット配信では最終ラウンドの模様が生放送され、小西はスタート前のインタビューで「生徒さんが中継を見てくれていると思いますので、期待に応えるためにも優勝狙います」とはっきり目標を口にしていた。気持ちを新たに1番ホールのティーショットを放った。自信ある飛んで曲がらない自慢のドライバーショットは快音を奏で、歯切れのいいプレーが続き、2、5、7番パー4ホールで順調にバーディーを奪取。フロントナインはボギーなしのスコアで一気に首位に躍り出た。バックナインでも12、14番パー4ホールでバーディーとスコアを順調に伸ばし単独首位に立つ。ところが17番パー4ではティーショットミスでまさかのダブルボギーとしたが、2位の澤口とは余裕の3打差。後続を突き放した形で最終ホールを冷静にパーでまとめ、24代目チャンピオンの座に輝いた。
アテスト後、チャンピオンとして放送ブースに着席し「ほんとうに嬉しいです。最初から優勝を狙っていたので、最終ラウンドは勝ちにいきました。2次予選でトップ通過してから、優勝だけを目指していました。まずは生徒さんにこの優勝を報告したい」と、画面の向こうで吉報を待っているレッスン生の気持ちを慮った。
今年1月1日付けでPGAティーチングプロB級会員として入会。現在は千葉県船橋市にあるレッスンラウンジで、競技ゴルファーを対象にしたプライベートコーチという肩書でレッスンを行っている。技術面に加え、競技中はどうやってゲームマネジメントをするか、ラウンドレッスンを通じ様々なシーンを想定してアドバイスをしている。レッスンにあたり、レッスン生のヒアリングを丁寧に分析し、見つけた課題から一打をどう減らすかと個々のレベルに見合ったレッスンを展開している。小西のレッスン歴は約1年。PGA入会して間もないが、どのように競技ゴルファーに向き合っているのだろうか。
実は東北福祉大学ゴルフ部出身で、同期には2021年レギュラーツアー参戦4試合目で「ジャパンプレーヤーズ選手権」に優勝した片岡尚之と同期生でもある。ゴルフ部時代は副キャプテンを務めていたが、4年の時に競技者としてではなく、選手をサポートする側でゴルフに携わりたいと決意したという。大学卒業後にティーチングプロB級テストを受験、1年間PGAのゴルフ理論を学び、今年からPGA会員として活動している。
初めて参加したティーチングプロ選手権だが、学生時代に培った『競技者』という経験値が活き、初優勝タイトルを手にすることができた。このタイトルで競技に向き合うレッスン生の、驚き喜ぶ顔も浮かんでくる。「ゴルフを通して人を幸せにしたい」という目標を一つ達成できたことで、これからのレッスン活動にも自信がついてくる。「日本プロ選手権にも出場できることは大きな励みです。ゴルフで生きる道はそれぞれ違いますが、同期で活躍している選手と同じフィールドに立てるのはすごく新鮮ですし、来年の大会までにはもっと自分の技術を磨きたい」と目を輝かせた。
競技ゴルファーにゲームマネジメントをアドバイスする「プライベートコーチ業」に、今回の優勝により実績を加えることができた小西。この2日間を乗り切ったという自信を胸に、これからもレッスン生にゴルフする喜びを与え続けるだろう。
第2回ティーチングプロ女子選手権
第1ラウンド

しのいでしのいで77、高木亜希子が初日首位スタート
女子選手権・初代チャンピオンの高木亜希子が、第1ラウンドを77とし、大会連覇に向けて首位好スタートを切った。
「ピンポジションが難しかったです。3パットはいけないと思っていましたが、いきなり出てしまって・・・」。1番パー4ではピン奥1.5メートルに着けたが3パット、ダブルボギーからの初日がスタート。3番パー5では1メートルのパーパットを外してボギー。7番でも1つスコアを落とし、9番パー3で3パットボギーにしてしまい前半5オーバーで折り返した。
後半12番パー4では、残り100ヤード、ピッチングで3.5メートルにつけた。「カップを意識するのではなく、距離を合わせることだけに集中しました」とようやく初バーディー。このあたりからコースには5メートル近い風が吹き抜け、気温も下がってきた。グリーンスピードもさらに増し11フィートを超える感覚だ。続く13番パーオンに成功したが、痛恨の3パットボギー。15番、16番でつくったチャンスを生かせずスコアをさらに落とし77ストロークでホールアウト。
本人は「バーディーチャンスもありましたが、グリーンスピードが速く、最後までグリーンタッチが合わないまま、終わってしまいました。下りは届かないかなと思っていたら、傾斜の状況などもあって、カップを抜けていってしまったりと難しかったです」と苦笑い。短い距離を外すたびに気負ってしまっていた。
全体のスコアが伸び悩んだこともあって、2位の中村英美とは2打差で高木が首位に立った。残り一日、大会連覇に向けては「自分に自信をもってやるだけです。ティーショットはラフを避け、得意クラブのウェッジでバーディーチャンスを作っていけたら」と力強く口にした。
最終ラウンド

高木亜希子がトップを死守し完全Vで女子選手権2連覇達成
7オーバー首位スタートの高木亜希子はスコアを8つ落としたが、全体のスコアが伸び悩む中、追い上げた山本あいりを1打差で逃げ切り完全Vで大会連覇を果たした。
◇ ◇ ◇
最終日は、高木にとって一打をかけた激闘の優勝争いだったといっても言いすぎることはないだろう。首位スタートということもあり、トーナメントリーダーの戦いの行方が注目された。前日「この時期に、速くて硬いグリーンというコースコンディションで試合ができるなんて、感謝しかありません。だからこそ最終日は、自分のゴルフで大会連覇をしたい」と、難コースでの戦いに頂上を見据えていた。「速くて硬いグリーン」が髙木の目の前に立ちはだかっていた。
精神的にも技術的にも不安で一杯だった。「奥につけたくない」と否定的なマネジメントしか頭になかった。出だし1、2番で連続ボギー。4番も精いっぱいのボギー。ショットは曲がるし、パーオンも出来ない。不安だけがよぎる。「フロントナインはチャンスホールが無いんです。ショットが付けば別ですけど、難しいピンポジションでしたし、ボギーでも良し、ダブルボギーだけは避けようとすがる思いで、6番から4連続ボギーも耐えました」と振り返った。9ホール終えて42ストローク、7オーバー。前日作った貯金はすでに消化していた。
フロントナインに比べて、バックナインは距離も短くスコアを伸ばすチャンスがある。高木はハーフターンの時に「悪くないペース。パーオンを守ること。パーオンを作ること」と気持ちを切り替えた。1打ビハインドの接戦が5ホール続き、一打たりとも気が抜けなかった。15番パー5で痛恨の3パットボギーにしてしまうと、山本あいりに追いつかれた。残り3ホールは自分との戦いだと、高木は再び気を引き締めた。17番パー4のセカンドショット。同伴プレーヤーは2段グリーンの下段につけただけと知り「私はぜったい上段を狙う」と心に決めて大き目のクラブを選んだ。ボールは上段のグリーンを捉え、ピンまで1メートル半の距離につけてバーディーを奪取。トップの座を取り戻すことに成功した高木が、最終ホールもパーでしのいで、念願の2連覇タイトルを獲得した。
「素晴らしいコースコンディションの中、グリーン勝負となりました。2打差3打差は簡単に順位がひっくりかえります。だからこそ順位を意識せず、自分のプレーに集中する事だけが求められました」と振り返った。「大会連覇は簡単なことではないことを覚悟していました。だからこそ自分が連覇するんだという強い気持ちはずっと持っていました」。高木は所属コースのPGMマリアゴルフリンクスに週6回勤務し、月15回はラウンドレッスンに携わる。昨年大会を制してから連覇を目標に練習を重ねてきた。ラウンド実践経験、練習量だけは誰にも負けないという自信もあった。
インタビュー後、高木は携帯電話のパネルを触りながら「先に優勝報告したい人がいます」と携帯画面を耳に当てた。かけた先は師匠プロゴルファー西川哲だった。「西川プロのレッスンをお手伝いさせていただいて、その中でたくさん勉強させていただいています。ツアープロの経験から出てくる言葉は、レッスンでは生きることが多いのです。自分のゴルフの参考にもなっていますし、こういう結果を報告できるだなんて幸せなんですよね」と声を弾ませた。
高木にはもうひとり、研修生時代からお世話になっているという師匠がいる。シニアツアーに参戦している南崎次郎だ。「次郎さんからも早速、祝福のメッセージをいただきました。実は来週のコスモヘルスシニアで帯同キャディさせてもらえるんです。新しい発見がきっとありますよね。そして、今回の優勝という報告を届けられるのも楽しみです」。
ゴルフは常に人を通じて成長させてくれる。高木は2人の師匠との出会いがあったからこそ、こうして大会連覇したいというモチベーションも高くもっていられた。「家族や所属するゴルフ場、周りでお世話になっている人たちのおかげで優勝できました。次の目標になる大会3連覇に向けて、練習を重ねていきます」。高木は丁寧に選んだ言葉を噛み締め、さらに自分をブラッシュアップすると誓った。