2023年度PGA資格認定プロテスト

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2013年

小袋秀人、田村尚之ら6オーバーまでの47位53名がプロテスト合格

合格した53名。笑顔で「やったね!」

合格した53名。笑顔で「やったね!」

 

 北海道苫小牧市にあるエミナゴルフクラブ東コースで、2013年度の「PGA資格認定プロテスト最終プロテスト」が行われた。最終日は早朝、集中豪雨の為、スタート時間が1時間30分遅れたが、選手は最後まで1打を諦めず、72ホールを戦った。首位スタートの小袋秀人(戸塚CC)は、好調をキープし69をマーク、2位に5打差の13アンダーは、日本アマ覇者の貫禄を示した。アマチュアで実績を持ち、49歳でプロテスト初挑戦の田村尚之(呉CC)、2009日本アマ優勝者の宇佐美祐樹(フリー)らも合格。294ストローク47位タイまでの53名が、合格に歓喜の声をあげた。

 

2013年の大会成績はコチラ>>

第1ラウンド

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 エミナゴルフクラブ東コースで、最終プロテストが始まった。157名それぞれが、予選会からゴルフ人生を懸けて、最難関の最終プロテストまでたどり着き、合格という大きな目標を持ってやってきた。そのスタートを切った第1ラウンド。

 初日トップに立ったのは、19歳の香妻陣一朗(宮崎レイクサイドGC)だ。後半スタートの2番から連続5バーディは圧巻で、7バーディノーボギーの65をマークして最高のポジションをとった。姉のプロゴルファー香妻琴乃が活躍していることもあり、注目選手の1人だが、本人は「今週は、女子ツアーが近くのコースであるみたいですが、僕がテスト受けてることも知らないのかもしれませんね(笑)」といたってマイペース。それでも、JGAのナショナルチームで活躍、昨年は九州ジュニアや九州アマで優勝という実力者である。

 「北海道は初めて来ました。プロテスト受験も洋芝のコースも初めてです。とにかく自分のゴルフに徹して、テストに合格したいと思います」と、明るい表情を見せた。

 2打差の2位でホールアウトしたのは、嘉数光倫(熊本空港CC)と小袋秀人(戸塚CC)。嘉数は6番のパー5で3メートルのバーディパットをきっちり決めると、続く7番でも下りの5メートルのラインを読み切り、連続バーディ。後半も4バーディノーボギーで回り、67と好発進した。嘉数は23歳、プロテストは2回目の受験。東海大学ゴルフ部を卒業後、ゴルフ場に研修生として入り、練習を積んできた。

 「北海道は、大学時代に団体戦で試合に出ていたこともあるので、洋芝での試合経験はあります。いいスタートを切れましたが、あと3日間あるので、気をひきしめて試合に挑みます」と、練習に向かった。

 そして2012年の日本アマチャンピオンの小袋は、初のテスト受験。2番をボギーとしたが、3番パー5では焦らずきっちりとバーディ。その後もバーディを重ね、67でホールアウト。2日前から現地入りでも、体調が優れずに思うような練習もできなかったという小袋だが「試合前、体調管理がいかに大事かということがわかりました。少しでも調子を戻して、最後まで戦いたいと思います。所属させていただいている戸塚CCには、合格しましたといい報告をしたいです」と、気持ちを切り替えた。

 さらに、4アンダー4位には、大多和竜次郎(フリー)、1打差の5位には中山達徳(ベフゴルフ)と綿貫直基(小田急志津ゴルフ)が続く。中山は初の最終プロテスト受験。コースの芝に慣れようと、2週間前から現地入りし、9ラウンドを重ね、試合に備えてきた。

 「とにかく、ティーショットをフェアウェイに置いて、パー5でバーディを獲れるようにと意識しています。あとは、焦らずにパーセーブできればチャンスが来ると思っています」とプランを立てる。普段は兵庫のABCゴルフ倶楽部で練習しているが、ニュージーランドで半年ゴルフ留学した経験もあり、当時の厳しい環境も思い出して、テストに挑む。初のプロテスト受験となった綿貫は、ツアーのクオリファイトーナメントには挑戦していたが、39歳という年齢になり、プロゴルファーとしての人生をしっかり築いていきたいという思いがある。

 「8月上旬に、エミナへ練習ラウンドに来たときはかなり難しい印象でした。今日は風が強いということもありましたが、ティーショットをフェアウェイに置けたので、確実にスコアにつなげられました」。プレ予選から最終への進出を決めた綿貫も、この勢いでテスト合格を目指す。

 最終プロテストは、スタートを切ったばかり。それは、今後の人生を懸ける試練でもある。どの受験者にも合格して欲しいという想いは、誰もが願っているが、上位50位タイという合格ラインが、非情にもある。最大限の自分の力を出し切って戦ってもらいたい。

第2ラウンド

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 第2ラウンドの朝は、涼しい風からだんだんと強い北風に変わってきた。昨日とは全く違った風向きに、スタートホールから選手はクラブ番手に頭を悩ましている様子が伺えた。初日トップの香妻陣一朗(宮崎レイクサイドGC)は、この日もバーディラッシュのラウンドが期待されたが、「グリーンの読みとパターがマッチしなかった」と、イーブンパーでホールアウト。それでも、冷たい強風の影響もあり、全体のスコアが伸び悩み、香妻は首位をキープした。スタートホール(1番)のティーショットは、風の影響も受けて球は右のラフへ流れたが、冷静にラフからのショットをグリーン近くまで運びパーセーブ。思い通りのショットが続いたが、前日のようなパッティングができず、グリーンに苦しめられた。後半15番パー3でようやく3メートルのバーディパットを沈めるものの、スコアを伸ばすことができなかったと悔しい表情を見せた。

 「ショットは良かったんですけれど、今日はパッティングがオーバーすることがあったり、最後まで感覚がつかめませんでした。それでもいい位置についているので、あと2日、ベストを尽くします」と、初受験18歳の頼もしい前向きな姿勢だ。

 1打差の2位につけた日本アマ覇者の小袋秀人(戸塚CC)も、パッティングに苦しんだ。「3パットを2回してしまいました。20メートルくらいのロングパットが1.5メートルオーバーとタッチが合わずに、すこしストレスでした。昨日のグリーンとはイメージが変わったので、とにかく無理せずパーオンしたら2パットという基本を意識しました」と小袋。豪快なドライバーショットは290から300ヤードでアドバンテージを持つが、それでも「残り距離からの計算をきっちり行い、確実にスコアにつなげたい」と話す。

 アテスト終了後、小袋は成績掲示板を見て「これでトップの香妻に追いつける!」とライバルを意識する発言も。実は香妻と小袋は、昨年、JGA男子ナショナルメンバーとして一緒に戦い、同じ時間を共有してきた仲間だ。「香妻はいい後輩です。ゴルフは上手だし、一緒にご飯にいきます。それでも試合ではライバル。さらに上位を目指すことも、ゴルフのモチベーションですが、まずはプロになることが先決です(笑)」と、しっかりと目標を確認することも忘れない。

 また今回の特徴として、プロテスト初受験者が上位に浮上している。5位の塩見好輝(呉工業)は、今年東北福祉大を卒業、ゴルフ部ではキャプテンも務めていた。ゴルフの名門校である埼玉栄高校から東北福祉に入学、先輩たちがプロゴルファーとなり活躍する姿を直に感じてきた。大学の話に及ぶと「僕は松山(英樹)君の1つ先輩にあたります。最近は藤本(佳則)先輩とは一緒に合宿に参加させてもらったりと、ゴルフの腕を磨くには、ありがたい環境です。今回のテストで、いい報告をしたいです」と、キャプテンの意地をみせる。

 6位の副田裕斗(各務原CC)は、今年鹿島学園高校を卒業したばかりの18歳。小さいころ、祖父に教えてもらったのがゴルフを始めたきっかけ。高校では、親元を離れ、充実したゴルフ環境に身を置き、無我夢中で練習を続けてきた。「プロ入りすることで、親にはいい報告をしたい」と副田。プロテストだからという気負いは特になく、いつもの試合だと思って挑むのは、参加初めてならではの素直な気持ちなのだろう。

 試合は、4日間(72ホール)を通じて行われる。ただし、第3ラウンド(54ホール)終了後、50位タイのスコアから10ストローク以内の選手が、最終ラウンドに進出。そして、最終成績の50位タイまでの選手が、プロテストに合格する。いよいよ、テストも後半に入り、厳しさを増してくる。思い切り攻めたいという気持ちと、大怪我は避けたいという気持ち、自分の順位と合格ラインの50位タイのハードルを見比べながら、プレー中の心がさまざまに錯綜する。

 「最終プロテスト」という想像できない大きなプレッシャー。残り2ラウンドは、その50位タイのボーダーラインが、重く選手たちにのしかかる。

第3ラウンド

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 第3ラウンドは、陽射しがコースに降り注ぐ穏やかな朝を迎えた。誰もが諦めるわけにはいかない最終プロテスト。なんとか50位以内のランクに食い下がってプロゴルファーとして活躍したい。そんな気持ちを1打1打に込めて戦っていた。

 トップに立ったのは、昨年の日本アマチャンピオンの小袋秀人(横浜CC)。スコアを確実に伸ばしてこの日68をマーク、トータル10アンダーと単独首位に立ち、実力を発揮。プロテストに合格する目標、そしてライバルたちに差をつけてトップに立ちたいというしっかりとしたビジョンが見えてきた。2打差の2位には、小袋と最終同組でプレーした19歳の福原翔太(ケイ・ワイ・コーポレーション)。6アンダー3位には、秀島寛臣(六甲国際GC)、塩見好輝(呉工業)、副田裕斗(各務原CC)が並んだ。

 さらに2打差の6位に名前が挙がったのは、2009年日本アマチャンピオン。しかし、昨年、片山津の最終プロテストで最終日に崩れ、1打差で合格を逃した宇佐美祐樹(フリー)。それまでのゴルフ人生には無かった屈辱に、相当な悔しい思いがあった。今年はリベンジの年と決め、1次予選からの挑戦だった。

 「昨日までは、なかなかパットが決めきれず、ずっともどかしいラウンドでした。今日はバーディ発進だったのに、直ぐにボギー。それでも焦らずにチャンスを待ちました」と、気持ちを切り替え4、5番の連続バーディ、前半は2アンダー。後半も12番、17番のバーディで、波はあったものの69。通算4アンダー6位の浮上はさすがだ。

 「バーディチャンスが来ていたので、しっかりとプレーしようと思っていました。1年前にテストに落ちて以来、ゴルフを考えるいい時間ができたことは間違いないです。アジアンツアーに挑戦して、色んな国で強い選手にたくさん出会い、プロゴルファーとしてもっと活躍してみたいという思いが強くなりました。この1年は、PGAのツアーライセンスを取ることに目標を定めて練習してきました。3年前からオフシーズンに練習している米国タンパでの合宿も、北海道の芝種と同じ感覚ですし、明日、最終ラウンドへの準備はできています」と、リベンジができる好位置についた宇佐美は、しっかりと前を向いた。

 プロテスト初受験ながら、今日は68をマーク、宇佐美と同じ6位につけた三重野里斗(大分CC)は18歳。沖学園高校在学の2010年に九州アマ優勝、今年卒業してのプロテスト挑戦。ゴルフ一家かと思いきや、「家族は僕しかゴルフはしないんですよ」と三重野。小学4年の時に、興味のあったゴルフがしたいと自宅から2キロの距離にある練習場へ自転車で通いつめた。練習場の支配人から直接指導を受け、才能を見込まれ、コースラウンドにも出られる環境になった。実は、今回初の洋芝でのゴルフだという。「今までプロが参加する試合も経験して、高校卒業したらプロになりたいと思い、今回の挑戦になりました。とにかくこの洋芝でもボギーを打たないゴルフが目標ですし、あと少し、アプローチの感覚をしっかりとつかめればいいです」と、明日に期待を込めた。

 アマチュア時代に様々なタイトルを獲り、なんと49歳でプロテストに初挑戦している実力者・田村尚之(呉カントリークラブ)。2日間を終えて7オーバー82位からの第3ラウンドと苦戦を強いられていた。

 「今日はようやくパットが強く打てたんですよ」。前半を2バーディ1ボギー。後半は11、13、14番でバーディを奪って4アンダー。通算3オーバーで33位タイ。合格圏内に入ってきた。

 「なんとかアンダーで回ってきましたよ…。実は、昨晩『もっと気合入れて! 攻めんかい!』と、家族から叱咤激励のメールをもらってね。気持ちがスーッと切り替わりました。そしたら、朝から不安なくずっとプレーができましたよ」と、ようやく笑顔が戻ってきた。

 田村は、8月上旬の札幌オープンで11位と好成績を収めて、洋芝の感覚も不安がなかった。それでも、お盆休みの暑い時期に、プロテストに向けて普段はしない練習で体は疲労し、ゴルフの調子も優れずに会場入りしたのだった。

 「昨日まで2日間、何をやってもだめ。距離もあるし、とにかくしんどいなと思ってました。技よりも、体力が追いつかない。今日は、うまく気合が入ったのか、望みがある結果で良かったです」。田村は、同じ広島出身で、永久シード選手の倉本昌弘プロから「50歳でプロになって、シニアツアーで活躍するという新しい人生に挑戦してみては?」と、数年前の対談でアドバイスを受けてから、色々と考え抜き、今回の受験に至った。

 「この会場にいる受験生は、それぞれ生活が懸かっていることを感じますし、大きな緊張が感じられます。僕自身も、23年間、アマチュアゴルフの世界でお世話になっているし、応援していただいている方たち、そしてゴルフ界に何かの形で恩返しがしたいという思いです。最終日は、結果で天の声を聞くことになります」と、精一杯戦って、シニア世代への夢をつなげる。

 シニア世代で、もう一人、62歳で戦いを続ける竹下忠直(新城CC)は、PGAティーチングプロとしても活躍し、昨年のティーチング選手権シニアの部でも優勝している。竹下は2オーバー29位からのスタートだったが、スコアを3つ落として、5オーバー46位。「ドライバーは、250ヤード程度ですが、コースは落としどころが広いから問題ないですよ。ただ、セカンドショットが5番ウッドやユーティリティーを使わざるを得ないから大変です。若者との飛距離は感じるけれど、ここまでいい経験を積ませてもらってるから、おじさんは頑張るよ! なんとかこのまま耐えたいからね」と、ホールアウト後も、練習場でショットの練習に余念がない。

 ホールが進めば進むほど、順位がどんどん決まっていく。合格ラインの50位タイが、これほど重く、分厚いのかと、中には不安で夜も寝られない受験生もいる。いつもどおりのプレーをさせてくれない、過酷な最終プロテスト。あと18ホールで、いよいよ今年の合格者が決まる。

最終ラウンド

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 プロテスト最終日。早朝から激しい雨がコースに降り注ぐ。この時期に降る雨としては、一時的に終わるとはいってもかなりの降雨量だ。トップのスタート時間を1時間30分遅らせて、選手は最終ラウンドをスタートした。

 ダントツのトップ通過を果たしたのは、昨年の日本アマチャンピオン小袋秀人(戸塚カントリークラブ)。最終ラウンドもスコアを3つ伸ばし、プロテスト受験という環境でも実力と貫禄を示した。「テスト合格を目標に調整してきました。4日間はショットも安定していいプレーができました。的確にグリーンをとらえられたことで、他の選手よりもバーディチャンスが多かったのだと思います。今回はいい結果につなげられました」と、笑顔をみせた。最終ラウンドは、最終プロテストトップ通過者の特典として与えられる『来年の日本プロ選手権への出場権』の獲得が目標になった。

 「3日目を終えた時点で、単独首位でアドバンテージを持てましたし、狙わざるを得ないっていうことですよね(笑)。プロ合格をしたことと、日本プロ出場の確約が取れて、本当に嬉しいです」。

 2位通過の福原翔太(ケイ・ワイ・コーポレーション)は20歳。昨年2次プロテストで落ち、今年は絶対にリベンジすると臨んだ最終ステージ。「今日は余計なことをしないようにと耐えました。最終テストは、気持ちを絶やさないことが大変でした。これでようやく念願のプロライセンスが持てます。頑張った甲斐がありました」と、笑みがこぼれた。

 また姉兄に妃呂子、豊和とプロゴルファーがいる藤島征次(芥屋ゴルフ倶楽部)も、初の受験でテストに合格を決めた。「PGAライセンスを取った方がいいよ」と所属するゴルフ場に勧められて挑戦した。「調子は良かったので、あまり緊張はしなかった」と、堂々と4位通過。ゴルフ一家の才能がここでも開花した。

 今回最年少出場となった16歳の寺田天我(シプレカントリークラブ)。4オーバー38位からのスタートで、合格圏内の50位に留まるためには、スコアをこれ以上落とせなかった。「3日間、思うような自分のゴルフができずに不安でした。昨日もラウンド後に練習に行ったのですが、ショットが全然修正できないままでした。そんな中でスタートしたのですが、ショットの感じがそれほど悪くなかったんです。2番で1つスコアを落としたのも、不安にはならなかったです。6番のパー5でバーディが取れて、調子が出てきました」。前半は2バーディ、2ボギー。寺田の位置ではスコアを落とすことがダメージになる。後半は強い思いがプレーに表れ、ショット、パットとも決まりだし、4バーディを獲った。68をマークし、トータルイーブン21位で、初のプロテスト受験をプレッシャーの中でクリアした。寺田は、2011年に合格した稲森佑貴の記録を更新、プロテスト最年少合格者という記録も樹立した。(※1985年東西プロテスト統合以降での最年少合格者)

 「正直大変でした。不安定なショットを抱えて耐えるプレーをしないといけないので。今日はいざプレーしてみたら、出だしから思うようなショットが打てているんです。後半は耐えることよりも、スコアを伸ばしてみようという気持ちに変わっていました。不思議ですね…。これまでに受けて来たQTやプロテストでは、なぜか最終日にビックスコアが出るんですよ(笑)」と一安心した様子。寺田の中学時代は、オーストラリアのゴールドコーストでゴルフを学び、マシュー・ウィコブ氏と出会った。一軸理論という彼の考え方が自身のプレースタイルにマッチし、この4年間はゴルフを見てもらっているという。「マシューには嬉しい報告ができます。技術もメンタルももっと強くなりたいです」と、ゴルフに貪欲な16歳、これからの活躍が非常に楽しみなプロゴルファーだ。

 アマチュアとして数々の実績を持つ田村尚之(呉カントリークラブ)は49歳での挑戦。苦しい2日目が終わると、家族から「もっと攻めんかい! 攻めんかい!」と叱咤激励のメールをもらい、やるだけのことはやってみようと気持ちが変わった。最終日、3オーバー33位でのスタートは、大きなプレッシャーになっていた。出だしのホールで連続ボギーとして、前半は38。後半に入ると12番のパー3でボギーにしてしまい「これで6オーバーか…。これ以上スコアは落とせないけれど、パー5で1つでもスコアを獲ろう」と、合格ラインぎりぎりのところで開き直ったという。14、16番でバーディを獲り、1オーバー73でホールアウト。トータル4オーバー、31位で見事プロテスト合格を決めた。

 「4日間、本当に疲れましたよ。しんどかった。それでも初出場で合格を決められてホッとしました。次のゴルフ人生は、プロとして頑張ってみなさいって、天の声が聞けたということです」と安堵の表情を見せた。アマチュアとして23年間活躍してきた田村は、50歳という節目を迎えるにあたり、新たなゴルフ人生を歩むことになる。「これで来年はPGAシニアツアーにも挑戦できます。自分の力がどこまで通用するかはわかりませんが、競技に参加することで、高いモチベーションでいられます。実績を評価していただき、こうやってプロテストに挑戦する機会をいただけて感謝です。不安いっぱいでしたが、『合格』を決めて、応援してくれている方たちの期待に応えることができました。これからは、ゴルフ界に恩返しがしたいという気持ちです」と、田村は来年シニアプロとして、新たなスタートを楽しみにしている。

 合格者の中には、すでにPGAティーチングプロの資格を持ち、さらに技術レベルを向上させようと挑戦する受験生もいる。今回合格を決めた辻哲之(太平洋クラブ六甲コース)は、なんとプロテスト受験が15回目となっていた。「ゴルフを始めた年齢が19歳と、少し遅いんですよ(笑)。プロテストに挑戦を始めたのは29歳。14回のうち、最終プロテストは8回経験させてもらっていましたが、合格ラインに入ることができなかったんですね。長くて苦しい自分との戦いでした。落ちる度に『もう一度、挑戦だ!』と思わせるのは、ゴルフ歴がそれほど長いわけでもないからでしょうね(笑)。もう一度、ゴルフを見直して、基本に立ち返って、これからのプロ生活を豊かにしたいです」。

 吉成文伸(ノザワワールド)は、初の最終プロテスト受験となった。「本当に痺れましたよ…。北海道は、母が室蘭出身ということもあり、縁のある土地です。そういったことが力になっていたのかもしれませんが、ここまで来たらやるしかない! と自分に言い聞かせて最後まで諦めずにプレーを続けました。PGAの2つの資格が取れて、嬉しいです」と話した。辻と吉成は、最終プロテストの初日、2日目と偶然にも同組でプレーしていたが、お互いにPGAティーチングプロを代表して参加しているという誇りがあった。2人は声を揃えて言う。「PGAライセンスは、本当に価値があります。今までのティーチングプロ資格に、トーナメントプレーヤー資格が加わるのですから、本当の意味でプロゴルファーになったのかもしれませんね」と、今後、2人の活躍が期待される。

 また、来年以降のプロテストは、オープン化されると発表された。プレ予選への申し込みは、16歳以上の男性であればだれでも挑戦できるという内容だ。詳細は後日発表ということだが、新たなキャリアをもったプロゴルファーが誕生するかもしれない。

 2013年度は53名の受験生が、この難関を突破しプロテストに合格した。今後は9月25~26日に岐阜県の谷汲カントリークラブで行われる「第15回日本プロゴルフ新人選手権大会 ゼロホールカップ」に参加し、12月中旬の入会セミナーを経て、ようやくPGA会員となる。プロテストへ挑戦した長い日々、合格ラインに一喜一憂した時の気持ちをいつまでも忘れずに、プロゴルファーという魅力ある人生を歩んでもらいたい。
 

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