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2021年
村上拓海がトップ合格! 合格は292ストローク47位タイまでの51名!

村上は4日間首位の座を譲らなかった
2021年度PGA資格認定プロテスト・最終プロテストは、北海道・登別カントリー倶楽部(7,069ヤード/パー71)で行われた。チャンピオンコースと言われる厳しい72ホールの戦いを終え、会場は喜びと悔しさが入り混じる結果となった。最終プロテスト合格者は8オーバー292ストローク47位までの51名となった。首位スタートの村上拓海(21歳・フリー)が通算11アンダーで最終プロテストトップ通過を果たした。地元北海道勢では長谷川大晃(24歳・旭川GC)が37位で合格した。
第1ラウンド

村上はアイアンショットが冴えわたり絶好調で初日5アンダー首位
北海道にある登別カントリー倶楽部(7,069ヤード/パー71)で行われた第1ラウンド。朝から強い風がコースの中を吹き抜けた。初日首位に立ったのは5アンダーで村上拓海(フリー、21歳)。3打差の2位タイには岩渕隆作(エトワス、24歳)、植木祥多(フリー、21歳)、坂本隆一(くまもと中央CC、23歳)が続く。
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「ミスらしいミスショットがありませんでした。強いてあげるなら、パットを3回外したのがもったいなかったです」。クールに村上拓海は最終プロテスト初日のラウンドをそう振り返った。インコースからスタートし、10、11番ホールで連続バーディーを決める。その後は9ホール連続でパーをセーブした。アウトコース3番ホールでバーディパットをねじ込むと、7、8番ホールで再び連続バーディーを奪取してホールアウト。5バーディー・ボギーフリーの66はこの日のベストスコア。天候は晴れながら西北西の4メートルの風に加えて湿度50パーセント。時間が経つにつれてグリーンは乾き、硬く引き締まっていた。「グリーンはパンパンに硬く、スピードが速く感じたので3パットだけはしないように心掛けました。ドライバーショットはフェアウエイを捕らえ、アイアンショットは切れていました。好調ゴルフのままテストを迎えられて良かったと思います」。
村上は日本大学を2年生時に退学し、プロの道を選んだ21歳。そのまま在学していたなら大学4年生の年齢だ。現在は千葉県のゴルフ場でキャディーバイトをしながらミニツアーに参戦し、腕を磨いている。ジュニア時代の2017年には全国高等学校ゴルフ選手権で個人優勝した戦績を持つ。「高校卒業後でのプロ転向も考えましたが、まだその実力はないと思って大学に進学しましたが、やっぱり早くプロ転向したい気持ちが強まったのです」。村上が大学を中途退学した理由だ。しかし、JGTOのQT受験に失敗してしまったのだった。仕切り直しで迎えた2021年。PGAライセンスを取得し、改めてQTに挑む。3歳の時にシングルハンデの父・恭之さんからゴルフの手ほどきを受け、小学4年時には競技ゴルフを始めた。「できればトップ合格を果たして、サードQTから受けられるようになれば最高です。でも、まだ18ホールを終えただけですから、アイアンショットの切れを生かして行けたら…」。
かつては研修生だったという父の若かりし頃の夢――プロゴルファーライセンス取得、そしてツアーへ――息子が叶える時を迎えたのかも知れない。単独首位スタートは大きな手応えだろう。
第2ラウンド

難コースでは攻めるよりも堅実に守る!高校生・堺が3位タイ
第2ラウンド、受験生は難グリーンに手こずり、上位のスコアが伸び悩んだ。初日首位発進の村上拓海(フリー、21歳)が3つスコアを伸ばして後続を突き放し通算8アンダーで首位。5打差の2位に遠藤健太(サーティーファイブ、24歳)。さらに1打差の通算2アンダー3位タイに坂本隆一(くまもと中央CC、23歳)、若原亮太(フリー、23歳)、大嶋炎(東京GC、23歳)、堺永遠(フリー、18歳)が続いている。アンダーパーが全体の7%(9名)しかいない厳しいコンディションの中、残り2日間36ホールを戦い上位50位タイまでの選手が合格する。
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境は通算イーブンパーの9位タイで第2ラウンドを迎えた。インコースからのスタート。「昨日はグリーンが硬くてボールが止まりませんでした。ダブルボギーを打ってしまったホールもあったので、今日は安全に攻めていこうと決めていました」。グリーンキャッチさせるショットではグリーンセンターを狙う。14番ホールまでパーセーブを続けた。前日、ダブルボギーを叩いた15番パー3ホールを迎えた。「練習ラウンドの時から良いイメージが出せていませんでした。ドライバーショットはドロー、アイアンはフェードボールを打っているのですが、このホールだけどうしてもショットを引っ掛けてしまう。今日もグリーン左奥に打ってしまいました」と堺は悔しがった。それでもボギーには抑えられた。17番パー4ホールでこの日初のバーディーを奪い、後半に入ってからは3、5番ホールでのバーディーでスコアを伸ばした。3バーディー・1ボギー69でフィニッシュ。通算2アンダーの3位タイに浮上した。
福岡県福岡市在住の高校3年生である堺は、高校進学後にプロゴルファーらが切磋琢磨する「孔明軍団」メンバーに加えてもらった。「九州を代表するプロゴルファーの小田孔明さんと一緒に練習やラウンドをさせて頂いたり、ツアープロとしてのゴルフに対する考え方やスイングなど様々なことを教えてもらったりしてとても勉強になります。その恩返しのためにも好成績で合格したいです」。
最終プロテスト2日間、難しいコースコンデションながら71・69とオーバーパーのスコアは出していない。「攻めるよりも堅実に守る!です。安全プレーをしながら(バーディー)パットが入ってくれればいい。そう考えていましたが、(ステディーゴルフでも)アンダーパーをうまくマーク出来ました。残り36ホールもこのプレーを続けます」。
最終プロテスト第4ラウンド後、「合格できました!」と小田に電話を掛けるのが、目下の目標だ。
第3ラウンド

通算4アンダーの羽藤「最終ラウンドは自分らしいショットで挑む」
第3ラウンド、難グリーンに思うようなスコアを作れない受験生がいる一方、この日ベストスコア67を出した選手が順位を急浮上するなどムービングデーの一日。首位の村上拓海(フリー、21歳)が通算10アンダーでトップ合格に王手。第3ラウンドの50位タイスコアから10ストローク以内の115名が最終ラウンドに進出した。
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「この3日間、ショットがブレてばかりでスコアを伸ばせていません。パットで何とか凌いでいる感じです」。第3ラウンドは4バーディー・1ボギーの68をマーク。ここまで71・70とオーバーパースコアは出していないだけに、60台のスコアに目を細めるだろうと思われたが、羽藤勇司の顔は浮かない。「スコアの数字だけを見たなら、そう悪くはないかも知れませんが、その内容にまったく納得が行かないんです。ショットがもう少し安定してくれたなら、スコアを出せるのに…そう思ってしまいます」。悔しさを滲ませる。
練習日までショットが暴れることはなかった。だが、最終プロテストが始まった途端に思い取りのショットが打てない。右に曲がってしまったり、左に引っ掛かったりと安定しない。ピンを狙うアイアンショットではラインを出せない。ボールがグリーンに乗れば、得意のパットで凌ぐ。そんな繰り返しではストレスが溜まって当然だろう。
それでも3日目ともなれば少しは慣れて来る。受け入れるしかない。インコースからスタートした羽藤は10番パー4ホールでバーディーを奪取。13番パー3ホールでもバーディーが取れた。後半は2、5番ホールでバーディーパットを決めて、スコアを順調に伸ばす。しかし、8番パー3ホールで得意のパットにミスが出ての3パット・ボギーを叩いてしまったのだった。「スコアを大きく崩すほどのショットのブレではありませんが、せめて明日だけでも自分らしいショットでゴルフがしたい。攻めるゴルフをして終わりたいんです。練習場で調整して来ます!」。羽藤は時計とチラリと見て、ドライビングレンジへと小走りで向かった。
キャディーバイトをしながら最終プロテストに向けて練習とコースラウンドを続けて来た。「キャディー業務後の練習なので、満足できるほどの練習時間はありませんが、質を高めて来たので…」。短時間の練習には慣れている。それが羽藤には救いなのかも知れない。
最終ラウンド

トップ合格を自信に変えて、村上はツアーで活躍できる選手を目指す
チャンピオンコースとも言われる登別カントリー倶楽部で行われた厳しい72ホールの戦いを終え、会場は受験生の喜びと悔しさが入り混じる一日となった。最終プロテスト合格者は8オーバー292ストローク47位までの51名。首位スタートの村上拓海(21歳・フリー)が70ストロークで回り、通算11アンダーとし、2位に4打差をつけて最終プロテストトップ通過を果たした。村上は来シーズンの日本プロ出場権とJGTO・QTサードステージからの出場権を獲得。地元北海道勢では長谷川大晃(24歳・旭川GC)が37位で合格した。
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第1ラウンドでベストスコア66をマークして首位に立った村上拓海が、そのまま逃げ切ってトップ合格を果たした。第3ラウンドは通算10アンダー。2位の遠藤健太とは3打差の単独首位からスタートし、2番、3番ホールで連続バーディーを奪う。幸先の良いスタートは切れた。しかし、村上の心の中には全く余裕はなかった。
同組で回る遠藤とは前日も一緒の組だった。遠藤はPGAチャイナツアーに本格参戦し、シード権を獲得した実績ある選手だけに、そのプレーぶりに圧倒される場面も少なくなかった。しぶとい、粘る、スコアを落とさない。遠藤との3打差を守りとおすのは決してやさしくない。「遠藤さんのプレーを知っていたのが良かったのかも知れません。そのうえ、コースは一旦スコアを落とすと歯止めが利かなくなるタフさでしたから、まずはボギーだけは打たないように集中してプレーしました」。追いつけそうだという思いを遠藤に抱かせない。
村上が連続バーディーを決めた2、3番ホールで、遠藤も連続バーディーを決めた。(さすがにしぶといな)。村上の想定内のプレーだったことで焦りは感じなかった。逆に4番パー4ホールで遠藤がボギーを打ち、6番パー74ホールで村上がバーディーを奪ってその差を5打差に広げられた。「何打差あっても気は抜けない」。必死に自分にそう言い聞かせながらプレーし、前半は3バーディーの32で村上は回った。
バックナインに入ると無理な攻めを控え、パーセーブに徹した。肉体的にも精神的にも疲労感を覚え始める。キャディーバッグのポケットの中には、コンビニで買っておいたおにぎりが二つ。いつもはプレー中にランチ代わりにたいらげるのに、今日は一つしか食べられなかった。大好きな「筋子」と「こんぶ」でも、筋子しか口に入らなかった。首位の座を守り続けるのは、辛かった。
最終プロテスト2週間前のことだった。主催者推薦選手として村上は北海道・千歳で開かれたJGTOツアー「セガサミーカップ」に出場した。推薦したもらったお礼代わりのためにも予選は通過したい思いがあった。第2ラウンドの5ホール目でバーディーを奪い、通算5アンダーにスコアを伸ばし、決勝ラウンドの扉に手を掛ける。しかし、残り13ホールで4ボギーを叩き、予選通過に2打及ばなかった。「安心したり、油断したりすることの怖さと集中力の大切さを改めて感じました。予選落ちを喫した自分に大会スタッフの方々が『プロテストは合格して』って励ましてくれたんです」と村上。
屈辱的な予選落ちが、良薬となった。「何打差あっても油断しない」。気持ちは切れなかったが、疲労感までは抑えられなかった。16番パー4ホールでティーショットを右に曲げ、ボールは右ラフの傾斜面に止まった。「体が疲れと緊張で思うように動かなくなっていました」。それでもパーをセーブ。最終18番パー4ホールを迎え、遠藤とは5打差。これまでのゴルフ経験則からティーに上がる前に村上はホール攻略法を決めた。ティーショットがラフに捕まったらレイアップし、寄せワンのパーを狙う。ラフからの無理なパーオン狙いは、ボギーに抑えることも難しくなる。
村上のティーショットは左斜面のラフに捕まった。予定どおりフェアウエイに打ち出し、3オン。しかし、1パットどころから2パットに収められず、3パットのダブルボギーでフィニッシュした。3バーディー・1ダブルボギーの70。通算11アンダーで最終プロテスト4日間、単独首位の座を一度も渡さず、トップ合格を果たしたのだった。
「サードQT出場資格はもちろんですが、来年の日本プロゴルフ選手権というメジャー大会の出場権を得られたのは本当に嬉しいです。自信にもなります」と72ホールの緊張感からようやく解放され、手にした二つの出場資格。この喜びをすぐに伝えたい。これまで応援してくれた様々な人々の顔が思い浮かぶと目頭が急に熱くなった。「このトップ合格を自信に変えて、でも決して満足はせず、ツアーで戦って活躍できる選手になるようにさらに練習をして行きます。2週間前の北海道での雪辱を果たせて良かったです」と、村上は赤い目を細めた。
キャディーバッグのポケットに入れたおにぎりがまだ一つ残っている。具はトップ合格を「よろこぶ(昆布)」ためだったとは、最後まで気づけなかった。