第90回日本プロゴルフ選手権大会

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第81回(2013年)

「半端ない」ヒョンソンが9打差の大逆転!

金は「目標はPGAツアーですけど、日本は大好きなんです!」

金は「目標はPGAツアーですけど、日本は大好きなんです!」

 

第81回日本プロゴルフ選手権大会日清カップヌードル杯は、金亨成(キム・ヒョンソン=韓国)が、最終ラウンドに7バーディ1ボギーの65をマークし、9打差での大逆転を飾り、日本タイトル初制覇。韓国選手の優勝は、2005年S・K・ホ以来の8年振り。賞金3000万円と5年間のシードを獲得した。プロ入り4戦目でのメジャー初優勝が期待された松山英樹(東北福祉大学)は、スコアを伸ばすことができずに1打差の2位タイで終わった。

 

2013年の大会成績はコチラ>>

 

第1ラウンド

松山は「練習場ではショットがパラパラ。コースに出たら、なぜか良く成りました。なんででしょう?」と苦笑い

松山は「練習場ではショットがパラパラ。コースに出たら、なぜか良く成りました。なんででしょう?」と苦笑い

 

 松山英樹(東北福祉大)が、初出場初優勝に向けて、4アンダー67で首位呉阿順(中国)に1打差2位の好スタートを切った。インスタートで3番パー3では奥にこぼしながらチップインを決めるなど4バーディー、ボギーなしだった。同じくボギーなしの67で深堀圭一郎(フリー)が2位で並走、復活への期待を膨らませる。初出場の小平智(フリー)も2位タイにつけ、初日から混戦模様になった。

 松山は正直に言った。「練習場では全然当たらなかったのに、コースに行ったら当たるようになった。自分でもびっくりした」。きっかけは?「ないです。ラッキーということで」と苦笑いした。

 インスタートの10番で3メートルのロングパットを沈めてパーセーブ。「アプローチがあんなにオーバーするとは思わず、動揺しましたけど、落ち着いた」という。ショットに自信がなかったことも含めて、ドライバーを使用したホールは7ホール。「ピンがだいたい奥だったので、手前手前からいけばそんなに大けがをしないかなと。うまく攻めることが出来ました」と振り返った。17番ではティーショットを右ラフに入れたが、無理せず9番アイアンで刻み、残り70ヤードからOKバーディー。引き連れたギャラリーを沸かせた。意図通りのプレーが、初の国内メジャーで簡単に発揮できるところが、いまの勢いを表している。

 「しっくりこない」という不安はぬぐいきれていないが、「まずスコアを作ることが大事なので、そういったことは言ってられない。そういう部分ではきょうはよかったと思います」と、及第点はつけた。同伴競技者の松村が「ピンチらしいピンチはなかった」といっていたが?「けっこう、ピンチあったと思います。自分の中でピンチと思っていても、向こうの人は思っていないみたいで」と笑った。

 今日は上出来?「そうですね。こんないいスコアで上がれると思っていなかったので。いいスタートを切れたので、この順位を落とさないように明日プレーして、決勝ラウンドに進みたいと思います」と、落ち着いた口調で話した。

 そんな「大型ルーキー」に自分のゴルフで戦いを挑み、復活を遂げたい。2位並走の深堀は「ゴルフ界のレベルが上がって、松山のような大型の選手がでてきた。正面から向かうと勝てない。自分のスタイルを貫くこと。72ホール我慢することですね」と、思い描く。ボギーなしの67。インスタートで14番で4メートルを入れるなど4バーディー。「ショットがよかった。ミスは、最後の9番でちょっと当たりが悪かったぐらい」と振り返った。

 復活の舞台としては絶好の大会。09年に歩くことも困難なほど悪化した左足底の痛みでシード権を失い、11年2月に手術。昨年は1度だけ行使できる生涯獲得賞金25位以内の資格で出場し、この大会で2位に入るなど、賞金ランク43位(2605万円)でシード権復活にこぎつけた。「一度死んだ人間が去年のこの大会できっかけをもらった。またこの大会に戻ってこられて、自分の責任と思ってやります」という。

 「けがで一度切れたところから上がっていくのは大変なことなんです。仲のいい丸山(茂樹)はじめ、40歳を過ぎた選手がけがなどで一度打ちのめされて、そこから戻るのは。僕は、2度咲き出来る選手になりたい。結果を出して、丸山はじめ、みんなに(思いが)届いてほしい」と、一気に、よどみなく話した。「まだ4分の1。びびりながらやっていきます」と、笑った。

 松山に刺激されているのは、同世代の方がより強い。同じく2位につけた小平は「アジア大会(2010年)に一緒に行った松山や、川村(昌弘)や藤本(佳則)とかすごい刺激になりますね。早く追いつかないと」と、目を輝かせる。

 インスタートのスタート10番でいきなりOKバーディー。この日は「バンカー」がカギになった。14番、17番と2つのパー5で第2打をバンカーに打ち込んだ。そこからOKに寄せて、前半3バーディー。「つるやオープンでバンカーショットがことごとくダメだった。1週間前に新しいサンドウエッジに替えました。少し削って、顔を変えた。ちょっと小さい、好きな顔になりました」という。好みのタイプは安心感があるそう。「砂もさらさらで抜けがいいんで、気持ちよく打ちました」と、苦手なはずのバンカーショットがリズムを生んだ。

 昨年9月のチャレンジカップで優勝し、いわゆる「裏シード」で出場権を得た。「歴史のあるこの大会は出たかった大会の1つ。この試合に出場できることが決まっていたんで、何度かオフにきました」と、この大会、このコースへの準備を進めてきた。「林間コースは目印があるので好きです。打つときは打っちゃうんで、油断できないですけど」という。「心の中ではパープレーぐらいと思っていたんで、貯金が出来て、明日から楽に回れると思います」と、初めての国内メジャーにも気持ちに余裕ができた様子だ。

 大会第1日、今野康晴(京葉CC)が6番パー3(174ヤード)でホールインワンを達成した。「6番アイアン。完璧だった。入るところは見えず、グリーン周りにだれ一人いなくて、ウンともスンとも言わない」と笑い「ピンについたと思った飯島(宏明)さんの球が少し手前にあって、グリーンに1つしかなかったんで入ったかなと。10メートルぐらい転がったようです」。ホールインワンは試合で3回目。プライベートを含めると「この前数えてみたんですけど、数え切れなくなってるって感じ。16回ぐらいかなあ」。目撃者がいなかったのが残念だった。

 

第2ラウンド

難しいコースほど、大好きという藤本

難しいコースほど、大好きという藤本

 

 ツアー2年目の藤本佳則(フリー)が、通算8アンダー134で首位に立った。16番から3連続バーディーで上がるなど、7バーディー、1ボギーの65をマーク。昨年初優勝を飾った日本ゴルフツアー選手権以来、メジャー2勝目を目指す。藤本と同年齢の小平智(フリー)が、2つスコアを伸ばして通算6アンダーとし、前日首位の呉阿順(中国)とともに2位につけた。松山英樹(東北福祉大)は15番でボールが動いたのに気づかず打ち、2罰打を課されて通算4アンダーで4位。通算4オーバー146の51位タイまでの63人が決勝ラウンドに進出、ベテラン川岸良兼(ミズノ)が5年ぶりの予選通過を果たした。

 藤本は1番のパーセーブで、流れに乗った。いきなり右の林に打ち込んだ。フェアウエーに出して、残り174ヤードの第3打、7番アイアンで1メートルにつけた。「ここをパーでいけたのが、きょう一番よかった」と振り返った。林の中。前方を狙う冒険はしない?「そこなんですよ、ポイントは。僕も前へ前へ行きたいタイプなんで。でも、えらいことになるかもしれないし、林から出てもボギーになるかもしれない。状況判断できた。冷静になるということが大事なスポーツなんで、メンタル面の調子もいいんじゃないですか。成長したかなと思います」。

 グリーン上がうまくいっている。2番5メートル、4番2メートル、5番9メートルを沈めた。圧巻は15番でボギーをたたいた後。16番で7メートルを入れ、17番では1メートルにぴたりとつけた。最終18番ではグリーン手前にショートしたが、10ヤードのチップイン。3連続バーディーで一気に抜け出した。

 今季はパットに悩んできた。「でも読み方が悪かった。打ち方、構え方は変えず、いつか入るときが来るやろ、と思って待っていたんです」。今大会のグリーンは読みがあっていることに、練習日から気づいていた。「ここのグリーンの癖が分かってきた。うまく自分のものにしたと思っています。グリーンが小さいし、今週はパッティング勝負になるとは思っていました」と、進撃の要因を挙げた。

 「後輩(松山)も好調ですが」と聞かれ「僕に関係あるんですか?」と切り返した。ルーキーイヤーだった昨年、日本ゴルフツアー選手権でツアー5戦目でのメジャー最速優勝を果たした。東北福祉大の後輩、松山がツアー4戦目でこの大会。「自分次第で優勝できると思うし、お互いいいプレーが出来ればいいと思う。記録はいずれ抜かれるときもあると思うし、抜かれようが僕が持っていようが、いいと思います」。闘志をあらわにした。

 松山は林の中で、アクシデントに見舞われた。2つスコアを伸ばして、通算6アンダーで迎えた15番。左の林に打ち込んだ。6番アイアンで前方を狙った。林をうまく抜けてグリーン右バンカーへ。そこからパーセーブ、したはずだった。

 この日は、テレビ放送用に中継ホールのカメラで選手を追っていた。松山もしかり。林の中でソールした際、ボールが動いたシーンがアップでギャラリープラザのビジョンに映し出された。見ていたギャラリーから問い合わせがあり、競技委員会も確認。松山はホールアウト後、スコアカード提出前にマーカーの松村とともに大会本部に行き、ビデオを見た。松山のボールには線が引いてあり、動いたのが確認できた。競技委員会はゴルフ規則18「止まっている球が動かされた場合」の2項「球の動く原因となることをしたとき」を適用し、2罰打を課した。松山は「ビデオでスローで見たら、半転がりぐらい動いていた。気づかなかったので、そのまま打ってしまった。気づいて戻せばよかったんですが。ソールしたときに動いた自分のミス。自分の不注意がすごい痛いなと思います」と、ボールが動く可能性のあるライでソールしたことを反省した。

 首位藤本に4打差となった。「4打差で止まってくれたんで。あす少し縮めて、最終日に優勝争いできるように頑張りたい」と、前向きに話した。2罰打で15番はダブルボギーとなったが、実質的には2日間「ボギー以上なし」のラウンド。ドライバーを無理に使わず、ティーショットをフェアウエーに置いて、手前から攻めていく。2日間貫いてきたスタイルは、決勝ラウンドでも変わらないだろう。

 3位の23歳小平を含めて、上位の日本勢は20歳そこそこの選手たち。その倍も年上の46歳が、うれしさのあまりバンザイした。かつてのスター選手、川岸良兼が、2009年以来のこの大会出場で、2008年以来5年ぶりの予選通過を果たした。インスタートで、通算1オーバーで折り返した。「性に合わないのに、予選通過と思うと、せこいゴルフになってしまった。球を置きにいこうとしたら、みんなラフに行っちゃって」と、2つ落として迎えた4番。右の林に打ち込み、パーパットが6メートル残った。「入っちゃったんですよ、これが」。思わずバンザイ。「久しぶりにギャラリーの拍手はいいなと思った」と目じりを下げた。6、8番ボギーで通算5オーバーで迎えた最終9番。残り94ヤードの第2打。ピンに向かうと「周りのみんなが入れって言ってくれるんですよ。おかげでOKについてくれた」と、カットラインと予想された通算4オーバーに戻した。勝負強さはまだ残っている。

 1次予選から勝ち上がってきた。「ゴルフがうまくなりたいという気持ちはなくなってないですよ」という。若い世代の優勝争い。ベテランは「明日からすごいたたくか、すごいスコアを出すか。中途半端にはやりませんよ」。顔は年を隠せなくなってはいるが、プロ日本一決定戦の雰囲気に、気持ちは全盛期に戻ったようだ。

 

第3ラウンド

松山は出だしボギーで少し動揺したが、それでもうまく立て直せた

松山は出だしボギーで少し動揺したが、それでもうまく立て直せた

 

 松山英樹(東北福祉大)が、メジャー最速優勝に王手をかけた。前日2打罰を受けて首位藤本佳則に4打差でスタート。1番で今大会の初ボギーをたたいたが、徐々にペースを取り戻し、最終18番では奥のカラーから直接放り込むなど7バーディー、3ボギーの67をマーク、通算8アンダー205で首位に立った。勝てばプロ4戦目のメジャー優勝となる。4打差2位には21歳の松山と同じ愛媛県出身の24歳河野祐輝がつけ、さらに1打差で23歳の小平智が3位と、最終日最終組は20代対決になった。

 最終18番、松山は奥のカラーからパターで8メートルを直接放り込み、大歓声にこたえてガッツポーズ。それまで静かに、淡々とバーディーを重ねてきていたが、最後に21歳らしい自己表現をみせた。「自分はバーディーを取ってもすぐボギーがでるので。最終ホールだったので(ガッツポーズが)出ました」と、はにかんだ。

 風が変わった。予選ラウンドの北寄りの風とは反対に、南から時折強風が吹きつける。コースの表情も一変した。「昨日までとコースのイメージが変わっていた」と、1番では第2打でグリーン右ラフに入れて、今大会初ボギー。2番で3メートルのパーパットを沈めてから、徐々に集中力が増していった。3番パー3(210ヤード)では4番アイアンで右3メートルに乗せてバーディー。スコアを元に戻すと、進撃が始まった。

 前日、15番で左の林の中からのショットでボールが動いたことで2打罰を受けた。ショックは?「昨日の夜も思い出して、なんで気づかなかったんだろうと、いろいろ考えた。スタート前には忘れるようにして、途中から集中できるようになった」と振り返る。17番で右の林に入れた。前日と同じようなライの状況だった。「思い出して細心の注意をしないといけないと。(前日球が動く原因となった)ソールはちょっとしたんですが、離れたところでしました」と、振り返った。そのホールはパーにしのぎ、最終ホールへとつなげた。

 2位と4打差で最終日を迎える。「このゴルフ場なら(自分が)好調とはいえ、スコアは分からない。爆発的なスコアが出るかもしれない」。4打差あった前日首位の藤本は78をたたいて、ベストスコア67を出した松山とはこの日だけで11打差。現実に「何が起こるかわからない」ことが起こっている。プロ4戦目で初めて首位で最終日を迎える方が気になる。「明日の朝は緊張すると思う。どうにか力に変えるか。あわてないようにしたい」。圧倒的な力を見せている大型ルーキーでも、未知の部分に多少の不安は感じているようだ。

 松山と同じ、愛媛県松山市出身の河野は、最終日を楽しみにしている。「上がりがきつかったです」と、ホールアウトしてきた。14番パー5(537ヤード)で第2打残り225ヤードを5番アイアンで2メートルに2オン。イーグルを決めて一気に通算5アンダーに浮上した。「パーセーブをしていく、というゴルフがうまくいっていた」という。リーディングボードを見たのが悪かった。その時点で首位に2打差。「がっついてしまう悪い癖が出てしまって…。曲がるラインと分かっていたのに」と、17番で3パットのボギー。自分で苦しくした。

 風が変わったことへの準備はうまくいった。「朝、風をみて、今日はグリーンを外すことが多くなると思って、アプローチ練習を多くやりました。いろいろな打ち方で」。2番でさっそく、成果が出る。手前に外したが、10ヤードをパターで沈める。7番では15ヤードをピッチングウエッジで。12番はグリーン右手前から12ヤードをサンドウエッジで。バーディーは3つとも、外から放り込んだ。「練習では失敗ばかりだったんですが、本番ではうまくいった」と笑顔を見せた。

 「松山英樹君は地元が一緒で3つ下、小平君は1つ下。20代で最終組は、自分にとってはうれしいです。いい刺激を受けてやれると思います」。松山と一緒に試合で回ったのは、まだ小学生のときに「ジュニアの大会で2、3ホール回った」という。昨年、チャレンジトーナメントの賞金ランク1位で今季出場権を獲得。同郷のこともあって「自分から誘って」つるやオープンの練習日に一緒に回った。「めっちゃ、人(主に報道陣)がいてビビッてしまった」と笑う。最終日はその何百倍の人たちの視線を受けて回ることになる。

 3位につけた小平は、河野と「チャレンジ仲間で仲がいい」という。この日は最終組でのラウンド。エンジンの掛かりが遅かった。序盤、1番で5メートル、2番で3メートルを外した。3番で右崖の途中に落とすピンチ。2打目をバンカーにいれ、1.5メートルに寄せてナイスボギーに収めたが「きょうのラウンドはもったいなかった」と振り返る。8、9番連続バーディーで盛り返したが、15番で奥のバンカーから乗らず、ダブルボギーにしたのが響いて、首位に5打差に開いた。それでも最終日最終組の権利は手にした。

 「明日は松山と一緒ですよね。勢いに負けないようにしたい」と、目を輝かせる。「精神的に切れないように、粘り強くパーを続けていく。攻めるところと守るところのメリハリをつけていきたい」と、20代対決に腕をぶす。

 16番パー3で、ひときわ大きな歓声が上がった。平塚哲二がホールインワンを達成。「5番アイアン。右からの風にぶつけていって、手前からガンと。前の組がうまく入れなかったのか、旗が斜めになっていた。それで入ったんじゃないですか」と笑わせた。ツアーでは「3、4回目」というが「今年の韓国の試合(バランタイン選手権第1ラウンド)でやっているんですよ。予選落ちだったけど」という。賞金200万円がかかったホール。もし最終日にも出れば均等割りになる。「出ないことを祈ります」。賞金は「今年は稼いでいないんで、妻に渡します」。満面の笑顔だった。

 第1ラウンド6番でホールインワンを達成した今野康晴には、コースを運営するPGMホールディングスから賞金10万円が贈られることになった。

 

最終ラウンド

「今日は練習と同じような気持ちでプレーしました」とノンプレッシャーだった金

「今日は練習と同じような気持ちでプレーしました」とノンプレッシャーだった金

 

 松山英樹(東北福祉大)が、まさかの逆転負けを喫した。通算8アンダーで2位に4打差の首位でスタートしたが、1番で50センチのパーパットを外すボギーで流れを失った。3番から4連続ボギーで一気に後退。アウトを6バーディーの29で回った金亨成(韓国)が前日までの1オーバー17位から急上昇し、藤田寛之(葛城GC)とともに松山を逆転した。後半持ち直して15番で15メートルのパットを沈めた松山、前日の大たたきから復活した藤本佳則と4人が終盤激しい競り合いを演じたが、先に通算5アンダー279で上がっていた金がツアータイ記録の9打差の大逆転優勝、賞金3000万円を獲得した。日本ツアー2勝目、国内メジャー初制覇で、韓国勢のこの大会優勝は2004、2005年に連覇したS・K・ホ以来2人目となった。

 1つの油断が、大きく歯車を狂わせる。松山にとっては、1番での50センチのパットがこの日のすべてだった。8メートルのバーディーパットを50センチオーバー。「簡単に打ちすぎてしまった。昨日までパットがよかったということもあって…。もったいないというか、入っていたら結果が違ったかもしれません」。3パットのボギー。2番で1メートルのパーパットを沈めたが「違和感があった」と、気持ちを引きずった。

 3番から、ショットにも乱れがでる。3番パー3でバンカーに入れるボギー。4番では前日まで持たなかったドライバーを握った。フェアウエーに行ったが、第2打で突っ込みすぎて奥にこぼすボギー。「パットに不安を覚えてしまって、ショットで(ピン近くに)つけないといけないという意識になってしまって、ショットも曲がり始めた」。これまでも多くの選手が陥ったわな。1つの不安で全体のリズムを失う悪循環。ボギーが止まらなくなった。「苦しかったです」と、ミスショットにクラブを振り上げ、下を向くシーンが多くなった。8番パー5で1メートルのバーディーを決めて悪い流れをやっと止めたが、そのときは首位を明け渡し、自ら混戦を招いていた。

 金は気楽だった。首位に9打差17位で、最終組より1時間前にスタートしていた。「優勝は関係ない。最近、練習場ではプロだけど試合ではアマチュアになるドライバーの練習をしようと思った。目標なんてなかった」。ところが、グリーン上で打つパットがすべて入る。「びっくりした」。2番から4連続、7番から2連続。8番で入れた下り7メートルのパットは「プロみたいだった」と笑った。アウトを29で回った。通算5アンダーで、いつのまにか首位に立っていた。

 いつもの気迫が体から立ち上ってこない松山は、14番パー5で2メートルを沈めて通算4アンダーとして少し生気が戻った。「17番で(バーディーを)とって、他を耐えればと考えた」と、光が見えてきた。15番。グリーン右奥から15メートルのパットが入った。通算5アンダーで金に並んだ。それでも「入ったのはたまたまです」と、心にともった不安の火はくすぶっていた。取りたかった17番パー5。第3打を寄せきれない。そして18番。ドライバーショットは右のラフへ。ボールは沈んでいたが、選択肢はあったという。「グリーンは止まらないので、花道から転がしてパーを取る判断もあった。バンカーぎりぎりに落としてピンを狙い、グリーンに乗せてパーかバーディーが取れるかもしれない。でもアプローチの調子がよくなかったので、ピンを狙った」。少し足りずバンカーへ。バンカーから2メートルに寄せたパーパットも「切れるか切れないか迷った。まっすぐ行こうと(キャディーに)言われたんですが、自分の中ですごく不安があって、ちょっと右に向いた分、右に抜けましたね」と振り返る。ボギーとしてプレーオフを逃した。1番の記憶が最後まで消せなかった。

 「ドキドキしていた。松山選手もチャンスがいっぱいあったし。プレーオフは大嫌い。ハンパじゃない、ホント、ハンパじゃない」と金は持っている日本語で喜びを表現した。通算5アンダーでホールアウトし、プレーオフに備えて練習場、練習グリーンで結果を待っていた。藤田が、藤本が伸ばしきれず、松山が最後に落ちた。まさかの9打差大逆転優勝は、1980年国土計画サマーズの船渡川育宏、1983年ゴールドウィンカップ日米ゴルフの中嶋常幸以来、3人目のツアータイ記録。「ラッキーでした」と笑顔をみせた。昨年はKBCオーガスタで日本ツアー初優勝を果たし、米ツアーの最終予選会を受けたが失敗。今後も米ツアー挑戦の気持ちはあるが「日本が大好きなんで、分からないですね」という。5年シードを得て「ハンパじゃない。余裕できました」と喜んだ。

 「自分がしっかりやっていれば、こういう結果にならなかった。勉強になりました」と、松山は唇をかんだ。初出場のプロ日本一決定戦で、最速国内メジャー優勝の記録も達成できなかった。成長したと思うことは?「ティーショットでドライバーを握らないという選択肢が増えたことは今後にすごくよかったなと思います。きょうはパッティングで崩れた中で、アプローチもうまくならなきゃと思いました。パッティングがよくないときにパーをセーブできるアプローチを」。悔しさをかみ殺しての会見後、ファンにサインをした。いつもは人数制限があるが、並んだ人全員、約150人に応じたのが、ファンへの気持ちだったのだろう。

 

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